nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

(5)受け入れていくのには時間がかかるものです。

   
 お子さんが性分化疾患を持っていることについて、何も心配していないし、気にならないし、悲しみも怒りもないという方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。そうであれば、すごいことです。けれども、そういうことはなかなかないものです。

 お子さんが性分化疾患を持っているということを受け入れるだけでもとても難しいことでしょう。実際最初は、お医者さんの言ったことを信じないというご両親はたくさんいらっしゃいます。受け入れていくのには時間がかかるものです。魔法のように一瞬でなされるものではありません。でも悲しみと怒りを癒すことからはじめていけば、事実を受け止めねばならないのだと思っていかれることでしょう。お子さんの状態も、そして自分自身の気持ちも。

 多くのご両親のように、最初は皆さんも、自分の子どもは病気なのだと不安に思われるかもしれません。もし病気なら、お医者さんは子どもを全力で助けてくれるでしょう。でも、その次に(ひそかに)思われるのは、子どもには普通に育ってもらいたいということかもしれません。これについては、私たちは、たくさんの経験からお伝えしたいと思います。皆さんがお子さんを受け入れることで、お子さんは自分を普通だと感じるようになるのだ、と。それにはまず、皆さんが自分自身の状況を受け入れられるようにしていかねばなりません。それには時間がかかるでしょう。皆さんは、お子さんが性分化疾患を持って生まれてほしいと願ったわけではないのですから。

 性分化疾患を持つ子どものご両親の多くは、性分化疾患のことを知ったとき、喪失感を感じられたとお話しされます。自分が望んでいた子ども(つまり、性分化疾患ではない子どもです)を失ってしまったように感じられるからです。この気持ちは、ダウン症候群や口蓋裂などを持って生まれた子どもを持つ親御さんが感じられる気持ちでもあります。赤ちゃんが生まれた直後に性分化疾患が診断された場合は特に、「望みの」子どもを失ったという深い悲しみを感じていらっしゃるかもしれません。

 この深い悲しみの中にはどのようなものがあるでしょう。「悲哀の5段階」という話を聞いたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。「悲哀の5段階」とは、事実の否定、怒り、これ以上ひどいことが無いようにという神や世界との取り引き、抑うつ、そして状況の受容です。自分はそれぞれ今この段階にいると思われたかもしれません。でも悲哀は人それぞれです。皆さんのような状況で親御さんが感じられる気持ちは他には、ショック、不信感、心配、恐れ、好奇心、困惑、混乱、そして寄る辺なさというものもあるでしょう。親御さんの中には、この状況に、食欲をなくしたり、眠れなかったり、頭痛やお腹の不調、疲れやすいなどといった身体的な反応を起こされる方もいらっしゃいます。こういう間は夫婦で何度も深く話し合うことがとても重要なのですが、ふたりで話をするのが難しくなるという方もいらっしゃいます。

 もともと性について話しあうというのはとても難しいことでしょう。子供の性の成長について話すときは特に。でも多くのご両親は、自分の体験や子どもの性分化疾患について話すことでとても癒されたとお話されています。 皆さんはお子さんの性分化疾患について、話しにくかったり、困惑されていらっしゃるかもしれません。そういう感情が引き起こす気持ちもあります。親御さんの中には、自分の子どもに否定的な感情(言いにくさや困惑)を感じることに、一番の罪悪感を持ったとお話される方がいらっしゃいました。皆さんも、こういう親御さんのように、否定的な感情を打ち消すことができないことを恐れていらっしゃるかもしれません。でも、皆さんが今体験されていることをことばにしようとすることはとても大切です。つらい状況を、ひとりで過ごさずにすむのですから。