nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

その人全体に目を向け続ける 〜ロングアイランドジューイッシュ病院では〜

 
 性分化疾患の医療は、2006年の新しい医療ガイドライン以降、親御さんやご本人をいかにサポートしていくか、欧米では様々な取り組みがなされるようになってきています。新しいガイドラインの特徴はまず何よりも、外科医や内分泌科医のみで対処するのではなく、児童の心理発達や精神的サポートのあり方に詳しい児童精神科医などを中心に、各分野の専門医、ソーシャルワーカー、臨床心理士、サポートグループなどがチームを組んで親御さんやご本人をサポートしていく、チーム医療体制の構築を強く推奨しているところでしょう。

 では、実際には現在の欧米の性分化疾患への医療体制はどのようなものになりつつあるのでしょうか?アメリカの性分化疾患医療体制の改善を進めている団体「アコード・アライアンス」では、サポートグループやチーム医療体制について様々な情報を発信しています。

 今回は、その中から、アメリカはニューヨークのロングアイランドジューイッシュ病院スティーヴンアレキサンダーコーヘンこども医療センターで取り組まれている、性分化疾患へのチーム医療体制の情報をお送りします。多民族国家のアメリカならではに、ご家族やご本人の宗教や民族性まで視野に入れたアプローチが紹介されていますが、インタビューを受けているソーシャルワーカーのトレイシーさんは、性分化疾患を持つ人々やご家族に対して、その医学的状態だけではなく、生活や人生、思いなど、その人の個別な状況、その人全体に目を向けることが何よりも大切だと強調されています。これは私たちのプロジェクトもとても大事なことだと思っています。

 日本でもぜひ早期に、このような体制が整えられていけばと願っています。

その人全体に目を向け続ける 〜ロングアイランドジューイッシュ病院では〜


 LMSW(ソーシャルワーカー試験合格者)のトレイシー・シャクターさんに、ロングアイランドジューイッシュ病院/スティーヴンアレキサンダーコーヘンこども医療センターでの性分化疾患チームの取り組みについて、アコードアライアンスの読者へご紹介できるよう、インタビューを行いました。トレイシーはチーム構築と、チームアプローチのあり方、そしてソーシャルワーカーとしての彼女の役割について語ってくれました。



 ロングアイランドジューイッシュ病院/スティーヴンアレキサンダーコーヘンこども医療センターの性分化疾患チームでソーシャルワーカーとして働けるようになってとても喜んでいます。私たちのチームは、小児・思春期婦人科のヘザー・アプルバーム,MDをプログラムディレクターとして専門的に結成されたチームで、現在十分にまとまった活動を行なっています。このチームは、小児内分泌科の Phyllis Speiser, MDや、小児泌尿器科の Jordan Gitlin, MD と Lane Parlmer, MD、小児外科の Nelson Rosen, MD、小児遺伝科の Joyce Fox, MD、小児精神科の Carmel Foley, MD、新生児集中治療部のCarol Adelman, DSW、そして婦人科ソーシャルワーカーの私から構成されています。


 ソーシャルワーカーの視点を尊重する外科医や看護師と一緒に働けるのはとても大きいことです。患者さんとご家族がドアを開けて出入りしてくるその前、後のニーズを考慮に入れてくれるのですから。私たちは、患者さんがひとりの人間としていかに生活されているのか、患者さんの周りとの関係、社会的ネットワークの中でいかに生活されているのかということに関心を向け、不確かさや不安、話しにくさ、悲しみ、愛、そして成長に対応するようにしています。


 私はチームのソーシャルワーカーとして、宗教や民族性、そして周囲の環境などの心理社会的アセスメントを主導する役割を果たしています。ご家族との信頼関係を作り、最終的にはご家族の困惑や知りたいことを共有できるようにするのです。まだ幼いお子さんのご家族には、診断や医学的介入、予後に関わる不安に一緒に対処できるよう支援しようとしています。10代の患者さんには、ボディイメージを中心に、積極的に耳を傾け、支援を紹介し、自分自身をより良く感じられるのに必要なコーピング手段を提供しています。患者さんが青年期ならば、決断は真に彼ら、彼女らの手に委ねられます。私はダイレクトに支援をし、身体的・精神的成長の観点から彼ら、彼女らがどのような地点にあるかを見極め、今、そしてこれからをどうしていくのかアシストするようにしています。


 早急な外科的「固定」処置が常にベストな長期的選択肢とは限らないこともあるということを認識してくれているチームとともに働けることに、私は特に満足しています。私たちのチームは、たとえば陰唇拡張には、外科的処置ではない、圧力式ダイアレーションのような選択肢を真剣に採用しています。私たちは、きっと患者さんが自分自身、自分の身体、自分の人生をより良く感じて私たちのクリニックを去っていけるよう努力しています。


 現在私は、陰唇発育不全の女の子のためのローカルサポートグループを作ろうとしています。私達は目下、患者の女の子の母親のピアサポートを提供していますが、これはお母さんたちが明らかに、娘さんの生殖能力が、この身体の状態によって減退するのではないかと大きな不安とストレスを体験されているからです。大人になった患者の女性に参加していただいてこのようなお母さん方にお話いただくことが、お母さん方の助けになると私は思っています。そうすることで、最初は母親の娘として社会に出て、自分の目的を達成し、社会の一員としてがんばっている女性と出会うことができるからです。このような「メンタリング」はとても貴重なものになり得ます。


 このチームでの私の一番大きな目標は、必ずその人全体に目を向け続けること、そして、私たちが遺伝学や、変異、ホルモンのことを扱っている時にも、絶対にその人全体を見失わないということです。この任務は、同じ目的を共有する医師や看護師と共に協力していくことで必ず達成できると思っています。


(原文)Keeping an Eye on the Whole Person at Long Island Jewish (LIJ)
Written by Tracy Schachter, LMSW Wednesday, 12 October 2011 09:50