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nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

(7)自分自身を助けることが、お子さんを助けることになります。

 皆さんは、自分のお子さんを守りたいと思ってらっしゃるのではないでしょうか?もしそうじゃなきゃ、このハンドブックは読んでないですよね。子どもが性分化疾患のようなものに直面するとき、多くの親御さんはとても強く「子どもを守りたい!」と思われるものです。「どうすれば助けられるの?」と。

 この章で皆さんにお伝えしたいことのひとつは(このハンドブックではずっとそのメッセージをお伝えしています)、子どもを守るには、まず皆さんご自身が、性分化疾患を持つ子どもを持ったということによって、気持ちが揺れ動いているということに気がづくことが大切だということです。こういう時に自分自身の気持ちや、自分が必要とすることを考えるなんて自己中心的なんじゃないか、わがままなんじゃないかと、もしかしたら感じられるかもしれません。でも、自分自身のことを考えることで、皆さんがお子さんを支える力にもなっていくのです。

 自分自身の気持ちや体験について考えることには、もうひとつ大事な理由があります。もし皆さんが自分自身の必要とすることについて考えないと、子どもが必要とすることでなく、親御さんが必要とすることを基準に子どものことを決めてしまうという間違いを犯す可能性があるからです。たとえば、子どもを守りたいという思いの中で、皆さんは、元に戻すことができない大きな医学的決断をしなければならないとお考えになるかもしれません。性分化疾患を持っているということでいじめられるかもしれないという可能性からお子さんを守るために、と。でも、落ち着いてゆっくり考えてみれば、お子さんの本当の望みを知る前に、お子さんのためにと今すぐそんな大きな決断をして、もしかしたら将来、皆さんの息子さんや娘さんがそのことを非難するかもしれない、そういう可能性があるということにお気づきになるでしょう。たとえば、落ち着いて考えるなら、自分は本当はできるだけ性分化疾患を追い払ってしまいたいのだとお気づきになるかもしれません。皆さんは性分化疾患によって重圧を受け、お子さんのことが心配になっているのですから。でも、医学が勧めてくるいろいろな処置を性急に行わずに一度待ってみる、その方がお子さんにとってはベストであるということもあるのです。皆さんが待つことで、お子さんには自分で決断する機会が与えられます。待つということは、皆さんとお子さんが、勧められる治療がいかに良い効果があるのか、もっと情報を得られるということも意味します。そして、待つということで、皆さんは子どもをそのままに受け止めているし、自分の身体のことを自分で決めていく子どもの決断力を自分たちは尊重しているのだという、お子さんへのメッセージにもなるのです。

 でもまずは何よりも、お父さん、お母さんがご自身のことをいたわるのが先決でしょう。お子さんを支えていくには、強力なサポートシステムが鍵になります。性分化疾患を持つ子どもの親御さんたちは、同じような体験をしている他のご両親とつながれたことがとても支えになったとおっしゃっています。(サポートグループを見つけるには、『第7章:利用できる機関・資料(もっと知りたい人へ)』を見てください。お医者さんに尋ねていただくこともできます)。ちゃんとしたサポートシステムがあれば、いろいろとたくさん知ることができますし、気分も楽になるでしょう。お子さんが成長していけば、息子さんや娘さんの支えにもなっていくはずです。*1

 お子さん自身も皆さんと同じように、自分が性分化疾患を持っているということに、深い悲しみを感じるということがあるかもしれません。まだ幼い間の子どもは、悲しく苦痛を感じると、日常のいつもの行動で気を紛らわすことが多いようです。子どもの深い悲しみはそれほど長くは続かないかもしれませんが、とても激しいものになりえます。子どもは遊びを通して自分の悲しみをあらわします。たとえば、病院に行かなきゃならないことが不安になると、就学前の子どもならとても激しくクレヨンで殴り書きをしたりするかもしれません。不安になれば、6歳ぐらいでも、また指しゃぶりがはじまることもあります。子どもは常に自分が取り扱える分の悲しみしか処理できませんし、自分の悲しい気持ちを間接的な方法で伝えるということもあります。また、悲しさを感じても大丈夫になるまで、その気持ちを自分から切り離しておくこともあるでしょう。

 皆さん自身がご自分の気持ちを乗り越えていけば、お子さんは皆さんの姿を見て、皆さんから学んでいくことでしょう。子どもは皆さんからその方法を身につけていくのです。子どものそのときの感情は皆さんのそれと同じものである時もあれば、違う時もあるでしょう。大事なのは、皆さんが愛情を持って、子どもの体験を尊重し、理解し、受け止めていくことなのです。親もひとりの人間であり、自分もまたひとりの人間なのだと子どもたちが理解するのは大事なことです。お子さんたちは皆さん以上に、思うままに感じたり動いたりできるとは限りません。でも、子どもの声に耳を傾け、子どもに寄り添って、子どもの感情を受け止めることで、皆さんはお子さんに理解と愛情を教えていけるのです。

 皆さんは、息子さんや娘さんとお話をすることや、安心して自分の気持ちを感じることができる親子関係を作り上げることで、お子さんが自分の悲しみを少しずつ乗り越えていく手伝いをすることができます。お子さんが辛い思いをするのは、皆さんには忍びないことでもあるでしょう。でも、お子さんの気持ちから逃げたり、お子さんの気持ちを別のところにそらせたり、ただ単に「大丈夫!大丈夫!」と言うことで、子どもの気持ちを消し去ってしまおうとするのは間違いです。それがどのようなものであれ、息子さんや娘さんが自分の気持ちをありのままに感じてもらうようにすること、どんな気持ちでも話したり表現したりしてもらうようにすることは、本当に大事なことなのです。お子さんには、皆さんのじっと待つ時間、配慮、サポート、正直さ、何でも表現できる開かれた態度、そして気持ちの受け止めが必要です。お子さんは自分自身の気持ちを乗り越えていく必要があるのです。

*1:訳者注:日本ではまだ現在のところ、ターナー症候群や副腎皮質過形成などを除いて、医療主導・協同のサポートグループはほとんど整備されていません。是非、皆さんのお医者さんにサポートグループを作るようにお願いするか、親御さん皆さんご自身でグループを作って下さい。グループ整備については私たちもご協力できればと思います。是非メールを下さい。また、サポートグループの他にも、病院の医療ケースワーカーや臨床心理士にご相談いただくのもいいでしょう。