nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

(8)隠し事は打ち明けにくさにつながり、正直さは受容につながります。

  
 このような状況の中で育ってきた人たちに、どうすればこの状況を乗り越えていけるのか、その秘訣を聞いてみたいと思いませんか?それはこうです。「お子さんのために皆さんができる最善のこと、それは息子さんや娘さんの性分化疾患について、彼らに対して開かれた正直な態度でいること」です。皆さんが隠し事のない態度でいれば、お子さんは自分のことを恥ずかしがることはないのだと分かるようになりますし、お子さんが自分自身で生きていく中で、親はちゃんと真実を伝えてくれる、信頼できる人なのだということを分かってもらえるようにもなるのです。

 悲しいことに、多くの人々がこの教訓を学ぶにはたいへんな苦労がありました。最近まで医師や性分化疾患を持つ子どもの親御さんたちは、子どもが大人になっても、本当のことは隠し通して誤魔化した情報しか与えないようにするというのが普通だったのです。ご両親や医師たちは、何も子どもを傷つけようとしてそうしたのではありません。むしろ逆に彼らは、子どもを守ろうと嘘をつき続けたのです。でもこれは思わぬ害を生み出してしまいました。そのような状況の中で育った子どもたちは、後に、親や医師に裏切られたと感じたり、自分のことを嫌なものだと感じる気持ちに圧倒されたり、医療ケアや家族の愛情を、それが必要なときでさえ求めることを恐れるようになることが多かったのです。

 性分化疾患について本当のことを話すという課題は、養子縁組をした子どもに本当のことを話すということと同じ面があるでしょう。昔は養子縁組をした子どもには、そのことは秘密にしておくというのが一般的でした。しかし、20世紀の終わりまでには、自分自身のルーツや自分個人の物語を知っておいたほうが、実際には子どもにはずっと健全だと多くの人が思うようになってきました。それと同じように、つい最近まで、性分化疾患を持って生まれた赤ちゃんのご両親には、本当のことを秘密にしておくようにと言われることがありました。しかし今では、養子のことと同じように、性分化疾患を持つ子ども(大人)も自分個人の物語を知り、自分自身は唯一無二なのだということを理解する方が良いと思われるようになってきています。

 もし皆さんが、ご自身の息子さんや娘さんに、身体の状態のことを隠しておきたいと思われていらっしゃるなら、それはうまくいかないことが多いということは知っておいてください。たいていの場合、どんな小さな子どもでも、家族の秘密には気がついてしまうものなのです。特にそれが家族の一員の秘密である場合には。また秘密というものは、家族での言い争いや、ちょっと口が滑ったというようなことで、突然明るみに出てしまうということもあります。本当のことがこのような状況で明るみに出てしまうのは、決していいことではないでしょう。こんなふうに明らかにならなくとも、性分化疾患を持つ大人で、自分の身体について話をされなかった人たちは、自分のことで話しをされていないことが何かあるのだ、ということは感じていたとおっしゃっています。なぜいつもお医者さんのところに行くのか、なぜそこで自分の性器が検査されるのか?なぜみんな手術跡のことを聞くと、たちまち様子がおかしくなるのか?自分の身体の状態について話をされてこなかった、今は大人になっている性分化疾患を持つ人たちは、このような疑念を持つことで、むしろ、本当のことを知るためにはどんなことでもするというようなことになり、時には、本当のことが分からないことで、実際の事実よりももっと恐ろしいことを想像したということもありました。

 秘密にするということがもたらす害は、ひとつには、それほど簡単に秘密のままにはできないということ、そしてもうひとつには、話してはならないような何か悪いこと、脅かされるようなことが存在するのだということを、意図せず逆に伝えてしまうということです。隠したり嘘をついたりすることで、むしろ不安が大きくなり、更に萎縮せざるを得なくていってしまうのです。隠し事があって話がしにくい状況の中で育った性分化疾患を持つ人たちは、自分には化け物のような何かがあるのだというメッセージを何かの拍子で受け取っていました。このような人たちの多くは、両親からも医師からも嘘をつかれていました。その結果、そういう人たちの中には、両親にも、医者にも、そして人というもの全体に対しても、どんな信頼もすぐにはできなくなってしまったという人もいました。

 自分の身体について何も話されてこなかった人たちの多くは、混乱と圧迫、萎縮に加えて、深い孤立を感じ、それは、誰も信頼できないという思いによって、更に強いものとなってしまいました。彼らは、こういう身体を持っているのは世界で自分だけなのだと、孤独を感じていたのです。これが、秘密と打ち明けにくさの「副作用」のひとつです。秘密と打ち明けにくさは、私たちが一人ひとり異なっているのだという理解を妨げ、少しでも違っている人たちを孤立させてしまうのです。

 こういう悪循環は断ち切られるべきでしょう。ありがたいことに今では、性分化疾患を持つ人やその家族が、萎縮や混乱、孤独や秘密に流される必要がなくなってきています。サポートグループや患者支援グループ、情報サポートネットワークに、個々の状態に応じた様々な団体がたくさんできてきて、性分化疾患を持つ人がお互いに出会い、ひとりではないのだということを実感する機会ができるようになっていますし、サポートグループによる啓蒙活動によって、多くの人たちが、性分化疾患とその状態を持つ人たちについて理解するようになってきています。

 さて、ここでの結論です。皆さんがお子さんに対して、性分化疾患のことについてオープンで正直な態度でいれば、皆さんが、子どもである自分のことを受け入れ、愛し、尊重してくれているのだ、そして自分のことを、自分の親であることを何も恥じていないのだ、そういうメッセージをお子さんに伝えることになります。皆さんの愛情と受け止めが、お子さんに最良のものをもたらしてくれるのです。