nexdsd JAPAN 性分化疾患情報サイト

体の性の様々な発達(性分化疾患)に関する情報を発信します。

(4)12ヶ月から36ヶ月まで

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。必ずしも、ここに書いてあることが正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。その上で読んでいただければと思います。


 よちよち歩きが始まる前後(子どもが12ヶ月から36ヶ月の頃)、子どもには大きな変化が訪れます。そして親御さんにも。この時期の間にほとんどの子どもは歩き方を覚えますし、他のからだの動かし方もこの時期に発達していきます。たとえば皆さんのお子さんも日々、自分の動きをどんどんコントロールできるようになっていくでしょう。親に向けてボールを転がすといったような、目で見て手を動かすということもできるようになっていきます。たいていこの時期にはトイレの訓練も進んでいくでしょう。おしめが取れてトイレを使えるようになっていくのです。

 お子さんがこの時期に入っていくと、子どもは周りの世界を探検するのに興味津々になっていきます。いろいろなことに夢中になって、何度も何度も「なぜ?なぜ?」と聞いてきます。そして、親御さん皆さんから離れた時の不安に何とか対処しようともしはじめます。たとえば、寝る時や保育園に行く時など、親御さんから離れるとき、タオルや人形、動物のぬいぐるみなどを使って不安に耐えようとするのです。この頃は同時に、お子さんにはちょっとした独立心が芽吹きはじめます。親御さん皆さんに頼り続けはしますが、それは困難だったり痛みを伴ったりする状況でも自分で対応できるようになるためなのです。

 この時期の成長としては、考える力の成長も挙げられます。子どもは自分の周りで起きていることを理解したいと思うようになります。この時期子どもたちは、他の人の振る舞い・行動を観察しコピーし始めます。また、毎日の生活で繰り返される行動パターンを認識しはじめ、ある種のパターンが繰り返されることを望むようになります。たとえば、お母さんが仕事から帰ってきてから夕食が始まるんだということを認識し、毎日その同じ時間に食事がとれるんだと予測することを学習するのです。更に子どもはこの時期、非常に気が強く強烈な意思を示すようになります。ものごとが自分の思い通りであることを望むことが多くなり、思い通りにならないと強いかんしゃくを起こすようになります。また子どもは簡単な計画や目標を決められるようにもなります。

 この時期には、言葉とその使い方を理解するようにもなっていきます。2歳から3歳の間には、自分がどんなふうに感じているか(たとえば、お腹がすいた、かゆい、悲しいなど)を説明したり、欲しいものを言ったり、周りの世界についてもっとたくさんのことを発見するといったような社会的手段として言葉を使い始めます。お父さんお母さんに何かを伝えたいのに伝えられなくて、もどかしさを感じるということもあります。

 遊びもまた、子どもが自分の思いや考えを親御さんに伝えるひとつの方法です。お子さんの遊びを見れば、子どもがどんなことを考えているのか、子どもがどんなふうにものごとを体験しているのか学べることが多いでしょう。たとえば、お医者さんの診察で自分が一番はっきり覚えていることを、子どもは人形を使って表現するということもあります。(あるお母さんのお話では、幼い息子さんが「お医者さん」役になって、定規で友達のおちんちんの長さを測ろうとしたことがあったそうです。それはお医者さんの診察で毎回行われたことでした)。公園のブランコを飛行機に見立てて、おばあちゃんの家に行くという遊びをすることもあるかもしれませんね。もし子どもが同じことを何度も何度も表現しているなら、何か戸惑ったり重苦しく思っているというサインかもしれません。そういう場合は、親御さんが一緒に遊んだりお話したりするといいでしょう。

 信じられないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このまだ幼い時期であっても、子どもは善悪の感覚を身につけはじめています。どんなことが「よいこと」とされ、どんなことが「わるいこと」とされるのか、子どもはそれを見ながら、善悪の感覚を身につけはじめているのです。善悪の違いを学ぶこのプロセスは、「道徳感覚の発達」と呼ばれます。この年代の子どもは、自分が求めるものを得る方法(たとえば、「よい子」であることで求めるものを得るという方法)を見つけ出そうとしますし、どうすれば親を喜ばせられるか発見しようともします。

 自分が何者であるのか、そしてそれは他の人とどう違うのか、その感覚が発達しはじめるのもこの時期です。まだもっと幼い時期であれば、鏡を見ても、そこに映るものは、子どもにとってはただの動くイメージです。けれどもよちよち歩きの時期の前後になると、子どもはたいていの場合、鏡に映るイメージが、他の何ものでもない自分自身なのだということを発見します。誰が自分の家族のメンバーなのか、自分と家族との関係、誰が兄弟で誰がそうでないのかということも理解しはじめます。なぜ自分には名字があるのかという理解も進みますし、娘さんであれば、男の子の兄弟とは違って、女の子の姉妹と同じように自分は女の子であると認識されているということも理解しはじめます。また、自分が求めるものが必ずしも親が求めるものと同じとは限らないという理解もはじまります。このような「自分」ということに関わる感覚は、「自己同一性(自己アイデンティティ)」の発達と呼ばれています。

 一般的に、子どもは2歳ごろまでに、自分が男の子であるか、女の子であるかという感覚を持ちます。子どもはさまざまな形で性別の違いを理解しはじめ、多くの人から女の子なのか男の子なのか聞かれますので、子どもたちは自分に与えられた性別に合わせようとします。子どもは自分の周りの人々を見たり、自分が女の子のような活動をしたとき、あるいは男の子のような活動をしたときに、人々が自分をどのように扱うかを観察することで、どういうことが自分の性別に「適切」とされるのか手がかりを得ていくのです。子どもは人々が基本的なふたつのグループ(男の子/男性と、女の子/女性)に分かれているんだと気がつきはじめます。声の質や着ているもの、ヘアスタイル、果たしている役割などで、それに気がつきはじめるのです。人の裸を見ることがあったら、ほとんどの男の子や男性、ほとんどの女の子や女性の体つきの違いにも気がつくでしょう。そうして子どもは、人の性自認とからだの性別は通常は一致しているものなのだということを分かっていくのです。

 この年代、ほとんどの子どもは他の子どもたちと思いっきり遊びたいと思うようになります。子どものそういう好奇心は、自分自身のからだ、他のひとのからだへの好奇心にもつながっていきます。時にその好奇心は、自分自身の性器や、一緒に遊ぶお友達の性器への好奇心にもつながりますが、これはほとんどの全ての子どもにふつうに見られることです。

 この年代で性器の違いに気がつく子もいますが、小学校に入る前後まで知らないままでいる子もいます。お子さんがこういう好奇心を持っているかどうかに関係なく、自分のからだについて話もしてもいいんだということをお子さんに分かっておいてもらうようにしていくのがいいでしょう。性分化疾患を持つ子どもの親御さんの多くは、性器のことのような繊細な話題を子どもと早めに話ができるようにすれば、子どもの成長に合わせて、こころの性別やからだの性別、セクシャリティについても話しあいやすくなるとおっしゃってます。オムツを換えたりトイレを使うのをお手伝いするときに、お子さんとお子さんの性器について話をするというのもいいでしょう。大層な話ではなく、「さあ、おちんちんをトイレに向けて。そうすればおしっこがちゃんと中に入っていくよー」とか、「うんちが終わったら、うんちが出てくるのとは違うもうひとつの大切なところがあるでしょう。そっちからお尻ちゃんと拭いていこうね」というふうに、時々簡単に話してあげればいいのです。

 こんなふうに、お子さんが自分のからだについて話すのに必要なことばを少しずつ教えていくのですが、決してお子さんが理解や受け入れができる以上の情報を押し付けるようなことはしないでください。お子さんの疑問や興味を聞いていて、何かきっかけがあれば答えてあげるという程度でいいのです。お子さんがどれほどのことを知ったらいいのか知らないほうがいいのか心配しすぎると、必要以上の話をしてしまったり、ほとんど話をしないということになりがちです。ゆっくり行けばいい、深呼吸しよう、子どもが訊いてることにしっかり耳を傾けよう、そう自分に言い聞かせれば、お子さんが本当に訊きたいことにどう応えればいいか分かってくるはずです。お子さんの疑問に答えるときに、新しいことばを少しずつ教えていけばいいだけなのですから。

 この年代のお子さんには、自分の性分化疾患の細かなところまで全部を理解するなんてできません。でも、ほとんどの女の子には陰核と陰唇(ふくらみと大切なところ)があって、ほとんどの男の子にはおちんちんと陰嚢(たまたま袋)があって、そうじゃない人もいるんだよというようなことはお話ししていけるでしょう。息子さんや娘さんが生まれた時、どんなふうに見えたのか、そういう説明も少しずつはじめることができます。

 お子さんが3歳にもなると、皆さん親御さんの不意をつくような質問をしてくることもあります。ですので訊かれそうなことに答える準備を事前にしておくのもいいでしょう。この頃の子どもは、自分の性器がどんなふうなはたらきをしているのか、なぜこんな形をしているのかという疑問を訊いてくることが多いです。ここでは3歳の子どもが訊いてきそうな疑問と、どんなふうに答えればいいかその例を挙げてみます。


子ども: 「なんで僕のおちんちんはパパみたいなのと違うの?」

こんな答えはどうでしょう: 「みんな顔もそれぞれ違うでしょ。それと同じで、からだもみんな少しずつ 違うの。おちんちんにもいろいろな形や大きさがあるのよ。あなたのおちんちんはパパとは違う成長をしているの。だから違うように見えるのよ」。

 もしお子さんが性器の手術を受けていたなら、すでに手術は終わっているわけですから、お子さんの性器の外見や手術跡の感覚がなぜそうなっているのか少しずつ説明しはじめるちょうどいいチャンスです。手術がどのように行われたのか、人形や動物のぬいぐるみなどを使って少しずつ説明していけばいいのです。さて、もう一度くり返します。娘さんや息子さんが知りたいと思うことについては、あくまでお子さん自身のペースに合わせましょう。そしてその疑問が自然に出てきたときには、隠し事はしないようにしましょう。息子さんや娘さんのからだのことについて早めにお子さんと話をはじめるようにすれば、お子さんの成長に合わせてお子さんとの会話を気おくれせずに続けられるでしょう。