nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

(5−2)3歳から5歳頃まで(小学校に入る前まで)

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。必ずしも、ここに書いてあることが正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。その上で読んでいただければと思います。


 お子さんの成熟も進み、この時期は、子どもの考える能力も増大します。まだ幼かったころと比べて、理解力や、ものごとを記憶する力も成長し、ものごとを分類することもできるようになっていきます。自分の周りの世界のものごとひとつひとつを理解し、それをどんな風に組み合わせていけばいいのかも分かってくることで、「大きな絵」を組み立てられるようになってくるのです。

 けれどもまだこの時期では、空想と現実の区別がつかないということもあります。たとえば、既に亡くなっているおじいちゃんでも、子どもは自分が望めば生き返ると思っていたりします。空想と現実の区別は、成長するにつれて理解できるようになっていきます。更に、ものごとがどのように起きるのか、なぜ起きるのか、つまり、ものごとの「原因と結果」を理解する力の芽が出てきます。また、自分以外の他の人の目から見た世界を想像できるようにもなっていきます。子どもはそれまでは、自分が世界の中心で、みんな自分と同じように感じるものなのだと信じ込んでいます。けれども、主にお友達との遊びを通して、他の人の立場に立ってものごとを見ることができるようになっていくのです。

 この時期になれば、子どもはことばを学び、それを使って他の人とコミュニケーションをとる練習をしていきます。自分の気持ちをことばで伝える方法を学んでいくのですが、とは言ってもまだこの時期では、ことばにするのではなく直接行動に走ったり(「行動化」と言います)、遊びを通してコミュニケーションをとろうとすることがほとんどです。大きな声で独り言を言うこともよくあります。

 この発達段階では、子どもは他の子どもとの友情を育みたいと強く思うものです。そのため子どもは、友だちを作るにはどうするのが大切か見つけだそうと躍起になります。どうすれば友だちができるのか分かってくると、他の子どもが友だちになってもらうには、自分の行動をどう変えればいいか考え出していきます。このことで、子どもは自分以外の人との協力、分かち合い、他の人の気持ちの理解、対立や相違の解決、そして他の子どもの振る舞いや関心との折り合いの付け方も学んでいくのです。

 もちろん子どもは出会う子出会う子全員と完璧なバラ色の関係を持つわけではありません。この時期のほとんどすべての子どもは、友だちになりたいと思っている子を仲間はずれにすることがあります。これはひとつには、この年代、子どもはカテゴリーでものごとを考えはじめるようになっているからです。子どもはこの時期、お友だちの中には自分に似ている子と違う子がいることに気がつきます。そして、あるお友達を違うカテゴリーの人として見て、それを遊びから仲間はずれにする理由にするのです。仲間はずれにされた子どもにとっては、これはとても苦痛な体験になります。なのでこの発達段階では、子どもはお友達から自分がどんなふうに見られているかとても気にします。

 お子さんの友達やクラスメートが上手にことばを使えるようになってくると、皆さんは自分のお子さんが周りの子どもからことばで傷つけられるのではないかと心配になるかもしれません。性分化疾患を持っていることでからかわれるのではないかと。これについてまず知っておかねばならないのは、いじめやからかいは私たち人間の生活では普通にあることだということです。親御さんはもちろん子どもをいじめやからかいから守ろうとするでしょう。それは当然のことです。けれども、みなさんがずっとお子さんをいじめから守れるかというと、それは単に現実的ではありません。大多数の子どもは(もちろん全員ではありませんが)、ある時点でいじめやからかいを受けたり、悪口を言われたりするものです。お子さんがからかわれていると聞くと、皆さんはすぐさま反応的に、お子さんを元気にさせるようなことを言われるかもしれません。でも、まず重要なのは、お子さんが傷ついたという事実をちゃんと受け止め、それをちゃんと理解したよということをお子さんに知ってもらうことです。「別に殴られたわけでもない。ことばで言われたくらいどうってことない」と、お子さんの傷つきを消し去ろうとするのは、お子さんが本当に傷ついているという事実を否定してしまうことになります。

 お子さんが悲しんでいるのを見るのは忍びないでしょうが、横に座ってあげて、お子さんが感じていることを話させてあげましょう。無理やり話させるのではなく、いつ話すのか、そのタイミングはお子さんに任せることも大切です。早く元気にさせようと焦ったり、逆に、お子さん自身が話をして自分の中で済んだと思えたようなら、(皆さんがまだそうじゃないからという理由で)それ以上は長引かせようともしないでください。
 そうです。お子さんがからかわれたときに皆さんがどうすればいいか。それは、どの子どもの親御さんでも、子どもが傷ついたときにやるべきことと同じです。ここでは、お子さんがからかわれたり悪口を言われたりして、悲しくなったり腹を立てていたりしているときに、どう応えてあげればいいか、その例を挙げてみましょう。


子ども: 「アンナとサラがもう遊ばないって、私に…。私のこと女の子に見えないし、変で気持ち悪いって…。」

このように答えるのはどうでしょう: 「悪口言われたり、一緒に遊びたくないって言われたら、本当悲しいよな。ふたりがそんなこと言って傷つけてくるのは、お父さんも悲しい。そんな意地悪なこと言い合ってるの見るのも辛い。どんなふうに感じた?もっと教えてくれないか?」
  

 親御さんの経験談としては、外見や見た目へのからかいについては、お子さんにそれがどういうものなのか事前に話をしておくというのも手です。そういうものは無知や意地悪から来るもので、からかわれる人は何も悪くないのだと、先に子どもに話しておかれる親御さんもいらっしゃいます。どんないやな目に遭っても、自分はいつでも味方でいるし助けたいと思っているとお子さんに伝えておくのも、お子さんの助けになるでしょう。あなたのことを愛しているし、好きだよということを、もう一度お子さんに保障してあげるのもお子さんの助けになります。

 もしからかわれたり悪口を言われたりしたら、どうすればいいか、どう言い返せばいいか、子どもと話しをしておかれる親御さんもいらっしゃいます。もしまた同じことがあったら、今度はどう言ったらいいと思う?と聞いておくことはできますね。そんなことがまたあったら、どうすればいいか事前に知っておけば、子どもも少し安心できるでしょう。同じような状況に直面しても、準備できていると思えれば、子どもは前よりも心強く、どうにかしようと思えるようになります。


: 「もしまたアンナとかサラとか他の人があなたをからかったら、今度はなんて言えばいいと思う?」

子どもはこう言うかもしれません: 「こう言おうと思う。“いじわる。そんなこと言われたら傷つくよ。私はそんなこと絶対言わない”。」
  

 大事なのは、親からどう言えばいいか指示するのではなく、お子さんが一番いいと思うことを、まずお子さんに言ってもらうことです。