nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

(8−2)青年期(11歳から18歳ごろまで)

ここでご紹介しているハンドブックはアメリカで作成されたものです。欧米と日本とでは文化差や、子どもの発達・成熟には大きな違いがあります。必ずしも、ここに書いてあることが正解ということにはなりません。欧米でも指摘されていますが、最も大切なのはお子さん個々の理解力の発達やご家族の状況です。話すか話さないかということも含めて、その答えはそれぞれのご家庭によって異なります。その上で読んでいただければと思います。

   
 先にお話したように、青年期を迎える子どもにとっては、思春期は性の目覚めにあたります。子どもは性的な気持ちを大きく感じるようになり、他の人に対してはっきりとした身体的魅力を感じるようになっていきます。この時期の子どもは、ボーイフレンドやガールフレンドのこと、デートのことなどを考えるようになります。皆さんのお子さんは、そういうセクシャリティについて、特定の心配をされるかもしれませんし、されないかもしれません。ですが、好きな人に魅力を感じたりすることへの戸惑いや、どうやってつき合えばいいのか分からないといった心配は、青年期の子どもにはみんな普通に見られることです。これまでと同じように、皆さんや誰か他の専門の人からの、性教育が重要になるでしょう。皆さんが自分ではどうしていいのか分からない場合や、お子さんが皆さんのほかの人とも話をしたいと希望される場合は、青年期の性について詳しいカウンセラーを探せば、支えてくれますよ。そういうカウンセラーを見つけるには、お子さんの担当医やサポートグループに問い合わせてみてください。お子さんの人生のこの時期、どんなふうにお子さんに接すればいいか、その例を挙げてみましょう。

   
親: 「性のこと、お前がお父さんに話してもいいって思ってるかどうか、お父さんには分からないけど、お前が何か聞きたいことがあるんなら、言ってくれればいいぞ。そうだったら、お父さんはちゃんと話しをしようと思ってる。お前が聞きたいこと、言いたいこと、どんなものでもな。ちょっと恥ずかしくなるかもしれないけど、話せればいいと思ってる。(ここで一旦止めて、必要なら、こう続けましょう。)性のことは、他の人に話すほうがいいと思ってるなら、同じような仲間や、専門のカウンセラーと話せるようにすることもできるぞ。」
   

 妊娠が可能かどうか、この段階でお子さんが気にされることもあるでしょう。お子さんが娘さんなら妊娠ができるのかどうか、息子さんなら相手の女の子に妊娠してもらえるのか、それぞれどうすれば妊娠が可能なのか、皆さんから聞いておきたいというお子さんもいらっしゃるでしょう。もしお子さんが不妊ならば、お子さんが生物学的な親になるのに、人工生殖技術が役に立つかもしれないこともあるし、そうじゃない場合もあるということをお子さんと話し合うようにしてください。(可能かどうかの結論は、お子さんの担当医やサポートグループが、答えられると思います。)養子縁組についても話をしておいてください。養子縁組した子どもを持つ家族をお子さんに紹介すれば、こういうことも可能なんだとお子さんに分かってもらえるでしょう。

 前にもお話したように、お子さんは、からだの見た目を変えたり、性徴を進めるような、外科手術やホルモン療法をどうするかお考えになるでしょう。お子さんには、どういう選択肢があるのかということと、それぞれのリスクと長所、それぞれどんな結果になるのかということを、ちゃんと調べておいてもらうようにしましょう。そして、息子さんや娘さんにとってよりよい決断ができるよう、じっくり考える時間をあげてください。お子さんは、自分が性分化疾患を持っていることや、あるいは自分が同性の人を好きになるということを、親御さん皆さんに「穴埋め」しようとしたり、「場に馴染もう」とするために、外科手術やホルモン療法を考えるという場合もあります。そのような様子があれば、その選択が、長い目で見て自分自身にとって本当に正しいものなのかどうか、お子さんが落ち着いて考えられるよう、必ずメンタルヘルスの専門家に相談させてあげるようにしてください。

 性分化疾患を持つ人は、青年期、同じような状況を分かち合える人と会う機会がないと、一人ぼっちで孤独のように感じられるかもしれません。お子さんがかかっている病院のソーシャルワーカーや看護師さん、子どもの生活の専門家に問い合わせてみれば、お子さんと同じ状況にある人にアクセスできるかもしれません。性分化疾患を持った同年代の子どもや年上の人は、自尊心やアイデンティティの問題に葛藤する10代の子どもにとっては、共感できる生きた見本となってくれるでしょう。同じか似たような性分化疾患を持つ人と会うことは、自分は全くただの普通の人間でしかないんだということをお子さんが再確認できる、大きな役にたってくれるのです。

 お子さんのセクシャリティについて考えることで、皆さんが深い悲しみの感情を抱かれても、その感情は十分ありうることですので、動揺しないでください。お子さんは、自分が「普通の」からだを持って生まれなかったことを悲しまれる時期を過ごされることがあるかもしれません。性分化疾患を持った子どもは、誰かを好きになって付き合いたいと思っても、それが大きなストレスを引き起こすこともありえます。「誰も自分と一緒にいたくないだろう。自分は性的に違うのだから」と。こういう思いは、息子さんや娘さんが同性の人を好きにだと分かった場合、更に強いものとなるかもしれません。拒否されるのではないかと恐れ、誰かと付き合いたいと思うことさえしないようにされるということもあるかもしれません。もしお子さんにそういう様子があるようなら、誰かと付き合うということは、からだのパーツの問題なのではなく、大切な関係を育んでいくことなのだと、お子さんに何度も何度も話してあげてください。どういうふうに大切な関係を結んでいくのか、息子さんや娘さんが考えるのを手伝ってあげてください。皆さんご自身の経験から、お互いの愛情と受容こそが大切なのだと、お子さんに示してください。どうやって好きな人との関係を育んでいくのかということや、性分化疾患のことをボーイフレンドやガールフレンドに話すという課題については、お子さんとカウンセラーが一緒に考えていくということも検討してください。同じか似たような性分化疾患を持つ年上の人と会い、その人が幸せな関係を長く続けているのを見れば、皆さんもお子さんも心強くなれるでしょう。

 このセクションでは、思春期から起こりうるたくさんのストレスや課題についてお話ししてきました。けれども、お子さんが成長して大人になっていくという、特別の喜びも同じようにあるのだということは忘れないで下さい。お子さんもこの時期になれば、皆さんとたくさんの興味深い話を話せるようになりますし、一緒にもっと大人びたことを共有できるようになるでしょう。(たとえば、もっと難しいスポーツをされたり、ニュースを一緒に見て話し合ったり、有意義なボランティアに参加したり、もしかしたら性分化疾患を持つ家族のためのサポートグループの運営に加わったりなんてこともあるかもしれません)。皆さんが子どもと一緒にいろいろなことを話したりやったりすることを楽しんでいる姿をお子さんが見せてあげてください。自分が自分自身であることはとても大切なことなのだと、お子さんに話してあげてください。親御さん皆さんの人生の歴史を話してあげてください。そうすれば、自分が成長し立派な大人になっていくのを見るのが皆さんは楽しみなのだと、お子さんに分かってもらえるでしょう。