nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

「カレンのライフストーリー」

  
 今回はのライフストーリーはCAISを持つ女性カレンさんの物語です。とても重い内容になっています。昔、性分化疾患を持つ人々は医師や両親から事実を知らされないことが一般的でした。それは患者さんを守るためという意図からなされたものでしたが、そういう秘密の中で、性分化疾患を持つ人々の中には、孤独を感じ、両親や医師への不信感を持ったり、自分についてより恐ろしい想像をされるという方もいらっしゃいました。このプロジェクトでご紹介している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」は、昔のこのような状況を踏まえて、子どもの年齢に応じて、できるだけ事実を話していくことを推奨しています。

 実際にご両親やお医者さんが、診断の内容の事実を告知するのかどうか、それは個別のケースに応じて、それぞれご判断されていることでしょう。実際私たちも、告知に関しては、ご本人やご家族の状況に細心の注意を払って見極めていかねばならないと思っています。(それでも昔よりは、事実をちゃんと告知するケースが多いようです)。本人には診断名や内容を話さないというご両親もいらっしゃると思います。ただその場合、カレンさんのようにお感じになる方もいらっしゃるということを、記憶のどこかに納めておいていただきたいのです。

 カレンさんも言うように、秘密にせねばならないのは、事実の衝撃と同じくらいに、無知からくる社会的偏見(スティグマ)があることでしょう。カレンさんは、周りの人が想像する誤ったイメージと恐怖についてお話されていますが、時にそのような誤ったイメージは恐怖だけでなく、善意からなされることもあるようです。カレンさんはそのようなイメージに対しては、もっと正確な情報を広める必要性を訴えてらっしゃいます。

(性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

   
ご覧頂く前に;ここでご紹介するライフストーリーは、それぞれ個人の見解であり、AIS/DSDサポートグループの運営者やメンバーの意見全体を代表するものではありません。私たちは、性分化疾患を持つ人やそのご家族が励まされるようなライフストーリーをご紹介できればと思っています。


カレンのライフストーリー


 私は33歳になって私の診断名、完全性アンドロゲン不応症(完全性AIS)のことを知りました。そこから私の人生ははじまったのです。私は自分のからだのことを私の医療カルテから知りました。そこには、「精巣性女性化症」による「男性仮性半陰陽」と書かれていました。なんていう決めつけでしょう!そして、なんて的外れな名前でしょう!私は自分が女性だと分かっていますし、決して、仮性なんかではありません。


 私がこれまで医師や家族から言われてきたのは、嘘か言い逃れだったのです。「子どもを持てないだけだ。養子をもらえばいい。そんな大したことじゃない。でも他の人には言っちゃダメ。ううん、特に病名はない。ううん、他のはそういう女の子はいない。ちょっとした遺伝子の違いだ。なんで毛が生えないことなんか気にするんだ。そんなもの必要ない」。私は嘘をつかれているって分かっていました。そして、両親も医者も話せないくらい何か恐ろしく恥ずかしいことに違いないと思ってしまっていたのです。しっかりした支えもなく、他のAISの女性との出会いもなく、自分自身を理解し何とかやっていく術はありませんでした。


 今の話をしましょう。私の人生にはもう、嫌な秘密はありません。私は妊娠できないことを悲しみ、今まで恐ろしくて重い暗闇を生きてきました。AISは不妊の原因になりますが、両親や医師の見当違いによって、一分の可能性も無くなってしまいました。性分化疾患で一番怖いのは、周りの人々が勝手に抱くイメージへの「恐怖」でしょう。それによって、私たちの多くは、恐れの箱に閉じ込められ、人生を完全に体験できず、喜びもなく、周囲を気にするようになるのです。でも、もう私はそんなことはしません。友達や家族に私の話を打ち明けることで、私は友達や家族との関係をより深く、より良いものになりました。Y染色体にについては、だから何?と思っています。テンプル・グランディン*1が言うように、「私は人と違うだけ。劣ってるわけじゃないのです」。


 AISのことを知るようになって、私はもっと寛容に、もっと人の気持ちを知れるようになりました。そして、私自身や他の人への私のひどい偏見に立ち向かい克服していくきっかけにもなりました。AISは私に受容を教え、自分が何者なのかということを深く考えさせてくれました今でもAISのことや子どもが持てないことを考えずに過ごす日はありません。けれども決定的な違いは、昔はAISに呑み込まれていましたけど、今では私のひとつの側面に過ぎなくなっているということです。


 私はスティグマ*2と、性分化疾患を持つ人への不十分な医療体制を終わらせるために活動をしています。女性とその家族のためのAIS/DSDサポートグループで働き、性分化疾患を持つ他の人との出会いは必須で、最適な心理カウンセリングが大切だということを広めていくお手伝いをしています。それに、今では私はお医者さんたちと一緒に、性分化疾患を持つ人への医療体制をより良いものにし、性分化疾患のもっと正確な情報を広める活動をしています。
   

*1:訳者注:アメリカの女性の動物学者。障害を抱えながら社会的な成功を納めた人物として知られています。

*2:訳者注:社会的偏見のこと。