nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

プレパレーション(こころの準備)

 先にご紹介した「治療と外科手術についての質問(6)」では、まだ小さなお子さんが病院に行くとき、お子さんに心の準備をしておいてもらうための工夫が書かれていました。もう一度見てみましょう。

A:次に病院にいくときに、約束の日はいつなのか、誰と行くのか、何を行うのかその予定についてお子さんに事前に話し、心の準備をしておいてもらうのがいいでしょう。まだお子さんが小さい場合には、ペットやお気に入りの人形で病院にいくことを演じてみせるというのもいいでしょう。子どもに親の役をやってもらって、ペットや人形をお医者さん役の皆さんのところに連れて行ってもらうのです。病院ではどのようなことをするのか説明して、ペットや人形でやって見せてあげてください。そして実際病院に行くときにも、ペットや人形を一緒に連れて行ってください。


 まだ小さなお子さんは、病院という所がどういう所かまだ分からず、いつもとかなり違う環境や、お医者さん看護師さんなどの見知らぬ人達、よく分からない機械、痛い注射、必要に応じて裸になること、そして性分化疾患を持つお子さんの場合は、自分の大切なところをお医者さんに見せなくてはならないなど、とても大きな不安や緊張、怖さなどを感じるということもあるかもしれません。そうなると、また病院に行くという時、お子さんは行きたがらなくなるということもあるかもしれませんし、親御さんもとても忍びない思いをされることもあるでしょう。

 このような場合、病院に行く前に、お子さんの年齢に応じて、病院がどういうところなのか、どういうことをするところなのか、事前に説明をしておくと、お子さんの不安や緊張が少し和らぐということがあります。

 「プレパレーション」とは、英語の"prepare"(準備をする)から来た言葉で、病院に行く前や、病院で診察・検査・手術をうける前などに、まだ小さなお子さんに、これから行うことを分かりやすく説明し、「こころの準備」をしてもらうようにすることです。

 説明と言っても、まだ小さなお子さんには口で言うだけではなかなか伝わりません。そこで、ぬいぐるみや人形、おままごとのお医者さんセットなどを使って、病院で行うことを先に実際に見てもらうようにするのです。

 看護師さんが新米の看護師さんにプレパレーションを説明しているところを引用します。

 まず一言でいうと、プリパレーションというのは大人でいうインフォームドコンセントみたいなもの。

 例えば「あなたは胃の手術をする必要があります」と言われた場合、大人だったら何故か?どんな手術か?原因は?等、いろんな予備知識があるから質問出来るし医師からの説明を受けてもある程度理解できるでしょ。でも、子供にはさっぱりわからないワケよ。胃ってナニ?どんなモノ?て疑問だらけの状態。

 この子供が抱く〈何故?〉を分かってもらうためにプリパレーションがあるの。

 分からないままいきなり処置なんかをやってしまうと、子供はただおびえるだけで、医療関係者や病院に対して否定的なイメージを持ったまま成長してしまう。それに病気に立ち向かうことが出来ないでしょ。不安や恐怖をできるだけ少なくして、これから始まる入院生活に頑張っていけることを目的にしているのよ。

 例をあげると、手術予定の子供に対して着せ替え人形みたいなものを作って、病衣から手術衣に着替えるところをやって見せる。そして、実際子供にも体験させることで手術当日に手術衣に着替えることに対して抵抗をなくすという感じ。医師も普段の白衣と違うから、手術衣に着替えマスクを付た人形を見せることによって、衣服が違うだけでいつもの医師だと理解させるのよ。

 作成するのは大変だけど、これをしておくと処置や準備がスムーズに進んで、看護師も子供も楽。ぜひ、頑張って子供に役立つものを作ってね!

(看護師コミュニティ)

 小児医療を専門としている病院では、熱心な看護師さんなどによってプレパレーションが実践されているところもあります。これは工夫次第で家でもできることです。お子さんが不安が高い場合など、ぜひご家庭でもお子さんに合わせて、工夫してやってみてください。

 こちらの資料はプレパレーションについて、絵付きで説明されていて分かりやすいです。
「プレパレーションの実践に向けて 医療を受ける子どもへの関わり方」

 看護師さん向けですが、本も出ています。

病気の子どもへのプレパレーション―臨床ですぐに使える知識とツール (Primary Nurse Series)

病気の子どもへのプレパレーション―臨床ですぐに使える知識とツール (Primary Nurse Series)

 親御さんとしては、お子さんの性分化疾患の医療については、辛く忍びない思いをされていらっしゃる方も多いでしょう。少しでもお子さんに嫌な思いをさせたくないと思う親御さんもいらっしゃると思います。プレパレーションはそのための一つの方法です。ですが、性分化疾患の医療については、特に大きな病院では、手術や検査の際、研修医の先生などがたくさん来られてお子さんの大切なところを見るということが今でもあるようです。これは大学病院等では研修目的でされているのですが、お子さんや親御さんにとっては、お子さんの性に関わる大切なところを大勢に囲まれながらジロジロと見られるという、一種異様な状況にもなり得ます。性に関わることは本来、大切な人に大切に扱われるべきところで、病院で嫌な思いをされた方や親御さんもいらっしゃいます。これではプレパレーションも意味をなしません。担当されるお医者さんには事前に、大勢に囲まれてジロジロ見られるということがないか確認して、もしあるような場合は、はっきりと断ることも重要です。