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nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

パトリシア・ロバーツさんからの手紙

パトリシア・ロバーツさんからの手紙

親御さん皆さんへ


 モザイク染色体(「混合性性腺形成不全」とも呼ばれています)を持つ子どもの母として、私は直に感じています。神様ってユーモアのセンスをお持ちなのね!と。本当の話をさせてください。ダナを妊娠中、友達から、男の子がいい?女の子がいい?と訊かれていたものでした。もう男の子と女の子の子どもがいたということもあって、「(黒い瞳に黒い髪、それにおとなしい)お兄ちゃんに似た女の子か、(ブロンドの髪に青い瞳で美人さんの)お姉ちゃんに似た男の子がいい!」と、私は答えていました。ええ、そうです。私はどちらも授かったのです。いいえ、それ以上の子どもを!


 45,X/46,XY染色体を持つ子どもが、いつも見た目だけでは性別が分かりにくい外性器を持って生まれるわけではありません。実際、そういう子どものほとんどは完全に男性か女性の外見で生まれてくると言われています。判明するにしても、後になってからです。成長障害があったり、染色体障害を示唆する体の微かな徴候があったりして、お医者さんがどこか悪いところがあるのかもしれないなあと思われる程度とのことです。それより前に、まだ子宮の中にいる時点で、羊水検査(アムニオ)で診断されるお子さんも多いかもしれません。こういう検査と診断を受けたお母さんは、何か悪いところがありうるという、あまりにたくさんの情報にさらされるということもありますが、検査を受けずに、モザイク染色体を持つお子さんを産んだお母さん方のほとんどは、悪いばかりの情報にさらされることなく、完全で健康な男の子を授かっているのです。私は羊水検査は受けないことにしました。この検査に伴う流産のリスクを考えたからです。以前未熟児を出産したこともあって、またこんなことになって欲しくないと思ったからです。妊娠中は体が辛くて、出産3ヶ月前はベッドで横になることが多かったのですが、その後、ダナが生まれました。


 帝王切開を担当したお医者さんは、「女の子ですよ!」と手術室の中で叫ばれました。そして、シンとした静寂が。小さいけれど、ちゃんと息をされてますよと言って下さいました。すぐには泣かなかったのですが、ちゃんと泣き始め、私の緊張も和らぎました。私には長く感じられましたが、数分後、夫がやって来て、ダナは大丈夫だとささやきました。でも、赤ちゃんのプライヴェートな所に「ふくらみ」があるから、他の小児科医に見てもらうよう連れて行っていると。ええ、そうです。その後数時間の間、少なくとも9人のお医者さんが私と赤ちゃんがいる病室を行ったり来たりしました。途中(やっとふたりっきりになれた時)、赤ん坊をゆっくり見つめる時間がとれ、お医者さんにはすぐに染色体検査をしてもらうようお願いしました。担当のお医者さんは、その必要はない、多分曰く的な障害があって、それに対するお薬をもらって家に戻って、そこから病院に通えばいいと断言されましたが、私は染色体検査はやって欲しいと言い続けました。ダナを男の子だと思ったからではありません!先に息子と娘がいましたから、大切でプライヴェートな所がどんな形なのか、もうよく知っていて、率直に言うと、ダナのは型にはまった形ではなかったからです。


 身体検査をいくつか受けて、性腺が外側には見つからないということが分かりました*1。CAH(内分泌系の疾患です)*2の検査とともに、染色体も調べるため、採血がされました。最終的には私は、赤ちゃんと一緒にいて、まるで娘は本当に小さなペニスを持っているように見える(陰のうはない、膣もない)ということを、少しずつ受け入れて行きましたが、それまでは私は頭がグラグラして、血圧がはね上がっていました。次の朝、超音波検査を長い時間受け、赤ちゃんのちっちゃな子宮が見つかったと聞いて、娘の性別を出生証明書に書くことができると、やっとホッとできました。


 2週間後、血液検査の結果が出ました。CAHの可能性は否定され、混合性性腺形成不全であると分かりました。それが、性別が分かりにくい外性器の状態の原因だろうと。再度の血液検査で、この予想は確実なものになり、私たちの話し合いの内容は、ダナのこれからへの影響の話になって行きました。その中でも特に、「性腺芽細胞腫」と呼ばれる稀なガンのリスクについて。性腺が発育不全の場合、この深刻なリスクが高くなり、できるだけ早いうちに、発育不全の(奇形の)性腺の切除が強く求められるのです*3。この時点で、私たちが考えなければならないことは、ダナの外性器の外見のことではなく、命と健康の問題全体になっていきました。有名な小児泌尿器科医の先生に予約を取りました。大変な時間のコンサルテーションの後、ダナの内性器の切除と、外性器をより女性のようにするための手術の日付が決まりました。ですが、その手術では、片側の線状性腺しか見つかりませんでした。7年後、ヘルニア治療の際、外科医の先生が、ダナの「行方不明だった」もう一方の性腺を発見したのです。神様のおかげでしょう。その性腺は石灰化していて、ガンにはなっていませんでした。


 最初の外科手術は完全なものにはなりませんでした。そのため、ダナは9歳の時点でも、膣が外に届いていません。ここ数年、ダナとともにいることで私たちが学んできたのは、膣が外に届いているかどうかは、娘にとってさほど重要なことかもしれないし、そうじゃないかもしれない、それは私たちには分からないということです。実際のところ、然るべき時が来たら、娘は自分の体の状態の複雑さを全て知っていくことになりますし、(ISNA*4の人々を含む)然るべき人々の助けを借りながら、ダナ自身が自分の性のあり方を固めていくことになるでしょう。これからの手術をどうするのか、その方向を決めていくのは、全てダナに委ねられるでしょう。娘が自分で決めたことが、娘にとって正しいことなのですから。


 より女性の平均的な外性器の外見に見せるための手術をするかどうか、先に伸ばしたことを私が何か後悔しているか?後悔はひとつとしてありません。娘は今までのところ、なぜ自分のプライヴェートな所が、診察室の本に載っている写真のようではないのか、気にしたり、誤魔化したりしたことはありません。他の女の子の前で一緒に裸にならなきゃいけない時も、おばあちゃんやベビーシッターの人とお風呂に入る時も、いつもと変わりません。娘は元々無鉄砲なところがあって、バービー人形よりもミニカーを好むところがあります。ですので時々ふと思います。ある日娘が私の方を振り返って、「ねえ、僕は本当は男の子だよ。僕になんてことしてくれたんだ!」と言うんじゃないかって。もちろん可能性の話です。でも、もしそういうことがあったら、私はこう言おうと思っています。「うん。お母さんはあなたの母親で、9ヶ月間あなたをおなかに抱えていた。男の子、女の子どちらでもいいと思ってたわよ。あなたがあなたであることを望んでた。お母さんもね、実はちょっと腹を立ててた。でもあなたにじゃないわよ!あなたのことが大好きだし、壊れやすい器を抱えるように、そっとあなたの側についてきた。あなたの人生が素晴らしい経験にあふれるものになるように、ずっと見守ってきた。ケガしたらそこにキスして、ベッドの下にいたモンスターは追い払ってきたわ。だから、好きなだけお母さんに怒鳴ったら、どうか、あなたを抱きしめさせて。そして一緒に話して、泣いて、これからのことを一緒に考えたいの!」。神様のおぼしめしがあるなら、どうか…。


 「愛は忍耐である。愛はすべてを許す」という言葉があります。親御さんの皆さん。すべてを教えてもらったら、みなさんがお子さんに一番良いと思うことをして、どうか振り返らないでください!皆さんの親としての確信と、どれだけ事実とお子さんを受け止めていけるか、それが、皆さんのお子さんが、彼、彼女自身の独自の人生を如何に大切に生きていけるかということを決めていきます。お子さんの性分化疾患について、全く何もしてやれないという日々が続くこともあるでしょう。ですが、どうか、皆さんなりの毎日の生活の、何気ない普通の日常を楽しんでください。それは、分娩室を出た瞬間から始まります。今、ここのことを大切にしてください。お昼ごはんで粗相をしたり、鼻水を出していたりするかわいいお子さんの何気ない毎日を大切にしてください。そんなお子さんの何気ない毎日の瞬間瞬間。そこでは、皆さんのお子さんは、他のすべてのお子さんがかつてそうであり、これからもそうであろう、何気ない普通の子どもなのですから。


愛をこめて

パトリシア・ロバーツ
   

*1:訳者注:性腺(精巣)が見つからなかった、つまりこの時点では女性の可能性が非常に高くなったということと思われる

*2:訳者注:CAH;先天性副腎皮質過形成のこと。見た目だけでは性別がわかりにくい外性器の状態で生まれてくる赤ちゃんの大多数は、XX女児の先天性副腎皮質過形成で、その場合、早急な治療を行わないと命の危険性が非常に高いため、この検査は必ず行われます。

*3:訳者注:未分化な性腺の悪性腫瘍化率は非常に高い

*4:訳者注:現Accord Alliance。性分化疾患を持つ人や家族のための支援団体