Nex Anex DSDs:体の性の様々な発達(性分化疾患)情報サイト

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AIS-DSDカンファレンス・イン・ボストン(1)

 去る7月18日〜21日までアメリカのボストンにて、AISなどの性分化疾患を持つ人々のサポートグループ、AIS-DSDサポートグループの年次大会「Orchids on the Harbor, 2013」が、「Becoming Me, Becoming We」をメッセージテーマに行われました。日本からも、AIS-DSDサポートグループジャパンの代表である女性の方と、このプロジェクトの代表が出席しましたので、少しご紹介できればと思います。

 AIS-DSDサポートグループは元々、AISなどの性分化疾患を持つ女性のためのサポートグループだったのですが、今回の17回目の大会からは、性分化疾患を持つ男性のミーティングも加わり、アメリカを中心に、カナダ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、そして日本から、総勢180人以上の子ども・大人の当事者の皆さん、更に家族、医療関係者が集まりました。

 分科会は全部で42ミーティング。性分化疾患の基礎講座からオペやホルモン療法など治療、いかに診断のトラウマを乗り越えていくかなどのカウンセリングなどについての医療関連、両親、子ども、きょうだいなど、それぞれのために用意された家族のためのミーティング、性分化疾患を持つ女性のためのミーティング、男性のためのミーティング、ユースのためのミーティング、また、家族から子どもに、本人から周りの人に性分化疾患のことを話すこと、結婚、養子縁組など、人生を生きていく上での課題についての皆さんの体験のシェアミーティング、そして、タレントショー(CAISを持つジャズシンガー、イーデン・アトウッドさんと、同じくCAISを持つ女性プロサックス奏者の方のコラボや、子どもたちのかくし芸が圧巻でした)に、カラオケ大会、ダンスパーティー(今風にヒップホップです)、ボストン水族館見学などのお楽しみ、更には、今でも「男でも女でもない性」「第三の性」と世間やマスコミから認識されることについて、いかに正しい知識と認識を広めていくか、マスメディア専門家を交えてのミーティングなど、様々多岐に渡るものでした。(夜はホテルのバーと部屋で飲み明かしm(_ _;)m)。

 参加者の方も、当事者の方では、まだ小さなお子さん(会場ではしゃぎまわっていて、とても楽しそうでした)から、ユース、成人、更には80歳近くになられるご夫婦、養子縁組をされて家族を作られた方、養子縁組をしたお子さんが性分化疾患であることが判明した家族、そして外科医、内分泌科医、臨床心理学者などの医療関係者など、本当に多岐にわたる人々が集まり、皆さん和気あいあいとした雰囲気で、笑ったり泣いたり語り合う姿が印象的でした。当事者、家族の別なく、やはり同じような体験をしてきたからでしょうか、私も含め、初めて会ったのに、当事者の方とも家族の方とも、みんな昔からの親友であるかのような雰囲気で打ち解けあえましたよ。日本語が少しできるという方もいて、全て英語のカンファレンスですが、心強いものもありました。英語ができなくても、この雰囲気を味わうだけでも十分に価値のあるものです。「患者会」と言うと、あるいはジメジメした暗いイメージを持たれることもあるかもしれませんが、個人主義のアメリカらしく、共通した体験がありながらも、性分化疾患の中でも様々な状態があることを認識し、それぞれの人生を認識し尊重し合い、積極的に(「性分化疾患を持った人として」ではなく)自分自身の人生を生きようとする雰囲気が最初からあり、とてもポジティヴなものでした。(AIS-DSDサポートグループジャパンは、とてもポジティヴなグループですよ)。

 ひとりで誰にも言えない、言わないまま抱え込んでいると、逆に同じ性分化疾患を持つ人の中でも、その個々の身体の状態、個々の人生の「違い」、そして更には、違いから浮かび上がる「自分自身」というものは認識・尊重できないように思います。そうなると、何かのイメージに囚われ、そのイメージに自分が生きられてしまい、自分自身の普通の人生・生活を見失いかねません。(カンファレンスでも、多くの方から、世間の持つイメージと自分自身の普通の人生・生活との乖離が話されていました)。集まることで、皆が普通の人生を普通に地道に生きていることが実感され、更に何かひとつのイメージで語れない個々の人生の違いが分かってこそ、益々自分自身になり、互いに手を取り合うことができるようになるのかもしれません。その意味でも、「Becoming Me, Becoming We」(「私」になる。「私たち」になる。)というメッセージテーマは大切なものに思えました。AIS-DSDサポートグループジャパンの代表の女性の方とも、まずはこの大会に日本からもたくさんの方が参加いただき、いつか日本でもこのような楽しい大会ができればねと話し合いました。

 またカンファレンスでは、まず写真などプライヴァシーを大切にする確認が行われ、女性だけのミーティング、男性だけのミーティングなど、安心・安全を守る仕組みがちゃんとなされていました。これはとても重要なことです。(逆に皆さんの元気な姿がご紹介できないのが残念です!)。

 今回私が参加した大会は、AISやスワイヤー症候群、卵精巣性性分化疾患尿道下裂などを持つ人々、家族のための大会でしたが、アメリカでは他にも、クラインフェルター症候群やトリプルX症候群・XYY症候群などの染色体に由来する体の状態を持つ男性・女性のためのカンファレンスや、先天性副腎皮質過形成(CAH)を持つ男性・女性のためのカンファレンスも各グループにて各地で行われています。日本からも参加者が増えればと思います。

 次回のレポートでは、サポートグループカンファレンスとともに同時に開催された医療カンファレンスと、そこでの私たちのプロジェクトとの話し合いを報告したいと思います。