nexdsd JAPAN 性分化疾患情報サイト

体の性の様々な発達(性分化疾患)に関する情報を発信します。

ジニー・ヘイズさんからの手紙

ジニー・ヘイズさんからの手紙

親御さん皆さん


 性分化疾患を持つ子どもの親として、皆さんは様々な感情を体験されていることと思います。その中には、自分を責める気持ち、怖さ、不安、それに否定したいという思いもおありでしょう。検査結果を待っている間などは、特に大きく感情が動かれていることでしょう。そういう時は、お父さんもお母さんもですが、自分がどう感じているのかお互いに話し合ったり、近しい家族の方や、そういう方がいるなら、信頼できる近しいお友達に話ができれば、かなり助けになるはずです。検査の結果が出て、診断がつけば、お子さんの体の状況についての疑問への答えも、探しやすくなるはずです。ちゃんとした知識を身につけていけば、今よりも対処しやすくなっていくはずです。


 すぐに各状態ごとのサポートグループにアクセスされることも、本当に助けになるはずです。性分化疾患を持っている大人の方だけでなく、子どもの親御さんのための素晴らしいサポートグループもあります。お子さんの体のことを話すのをためらわないでください。話ができるようになれば、肩の荷も少し軽くなります。


 診察に行く際は、お医者さんには必ず、お子さんのこれからに、皆さんがどのようなことを予測しておけばいいのか訊いておくようにして下さい。見た目のための外科手術の話ばかりで終わらないようにしてください。手術についての判断は、息子さんや娘さんが自分自身で決められる年齢になってから、お子さんご自身に任されるべき問題です。もちろん、尿路感染やその他深刻な医学的問題を治療するための手術とは別です。そういう場合は、お医者さんの指示に従ってください。


 お子さんがある程度理解できる年齢になったら、自分の体の状態について話をしてあげてください。もし不妊の問題をお持ちなら、男性や女性の中には自分の赤ちゃんを持てない人もいるということから話をしていくというのもいいでしょう。養子縁組をすることで、パパやママになるという方法もあるということを教えてあげることもできます。こういう話から始めていって、少しずつ、お子さんの理解力の成長に合わせて、話をしていってください。


 お子さんが成長してくれば、同じ性分化疾患を持つ他のお子さんと触れ合える機会を与えてあげてもいいでしょう。お子さんへの説明は、少なくとも中学校前には始めたほうがいいと思います。中学校時代というのは、友達関係のプレッシャーなどなど、人生の最初のうちでも非常に厳しい時です。ただでさえ混乱する時期で、最初から分かっているのであれば、この年代になって初めて体のことを言われても、さらに混乱を増すだけになってしまうかもしれません。


 お子さんの側にいてあげてください!自分の体のことについて訊いてきた時は、正直にオープンに話してあげてください。いちばん大切なのは、息子さんや娘さんを、他の「普通の」お子さんと同じように「普通に」接してあげる事です。それに、体の見た目だけのことでなく、生まれた時からの深刻な医学的問題がある場合も、どうかそれに寄り添ってあげてください。


ご自愛を。


ジニー・ヘイズ
   

ハーバータ・スミスさんからの手紙

ハーバータ・スミスさんからの手紙

親御さん皆さんへ


 皆さんとお子さんとの人生の旅路に、私の話が少しでも皆さんの励ましになれば光栄です。ですが、性分化疾患のことについての私の体験は少し違ったものになります。72歳の時です。私は他の国の6歳の子どもの法定後見人になるよう、要請されたのです。言葉や文化の違いなど、様々な障害に直面してきましたが、私は新たに、性分化疾患を持つお子さんの親御さんや保護者の方への尊敬の念を持つことができました。何よりも私が学んだのは、子どもの言葉にじっと耳を傾け、丁寧に見守ることの大切さです。


 私の経験はとても複雑なものでした。6歳のこの子は、検査と手術のために合衆国へ来る前までは、女の子として育てられていました。この子の両親には、既に4人の男の子がいて、この子にはもっと女の子のように見えるようにされたかったようです。検査の結果、XX染色体で、子宮と卵精巣があることが分かり、そのため医療チームは、この子をより女性のようにみえるための手術をするべきだと考えました。私はとても動揺しました。そのような手術はこの子には適切ではないように思えたからです。この子はどう見ても男の子であるように見え、彼自身も自分のことを男の子だと思っていたからです。手術の前、彼と図書館に行って、私たちは裸にされた男の子と女の子の写真を見ました。手術したらどのようになるのか見せると、彼はとても怯えました。次の日、頼むからお医者さんに、自分は男の子なのだと伝えて欲しいと、彼は私に話しました。結局手術はキャンセルされることになりました。


 なにかちょっとしたものでも疑問や疑いがある場合、手術や治療をする前に、心理的な面をちゃんと鑑定するのが大切です。このことを聞いて私を批判する人もいましたが、私は自信を持っています。皆さん親御さんは、お子さんの行動や心を一番丁寧に見ている人なのですから、お子さんが家族の中や学校などで、どんな風に振る舞っているのか、丁寧に記録して、病院に行くときはそれをお医者さんにも見せてあげてください。お子さんが一番、自分のことを知っているのですから。


 お子さんは、時が来れば、自分が男の子なのか女の子なのか、自分自身で分かるようになってきます。こういうことは本当にあまりありませんが、性別変更があるかもしれないということは、心の中で準備しておいてください。この子と私の経験はとても特異なもので、彼が表現する性別は、6ヶ月の間に4回、行きつ戻りつしました。このようなことは本当にあまりないことなのですが、心の準備だけはしておいて、もし混乱されるようなら、皆さんご自身がご相談できるカウンセラーを探してみてください。性分化疾患を持つお子さんとの生活をしていくには、皆さんご自身が落ち着いて健康でいることが必要なのですから。


 もし何かあって(カルテのある病院が火事になったり洪水にあうなど)、カルテが無くなってしまっては大変なことですので、お子さんの医療履歴については、常に記録コピーをもらっておいて下さい。これはお子さんの健康記録にもなります。私の経験では、医療履歴のコピーをいただくのが難しかったのですが、この子のケアを進めていくために、他の医療チームと情報を共有せねばならなかったこともあって、これはとても重要な情報になりました。


 最後に皆さんにお伝えしたいです。皆さんが天から授けられたお子さんとの生活を、どうか楽しんでください。私に託されたこの子はとても愛らしく、誇りに思っています。この子は、エンジニアになっていたり、トラック運送業に就いている。そんな将来が私には見えます。皆さんも、いつか皆さんの息子さんや娘さんが自分の夢を叶える将来を夢見てください。


それでは。


ハーバータ・スミス
   

パトリシア・ロバーツさんからの手紙

パトリシア・ロバーツさんからの手紙

親御さん皆さんへ


 モザイク染色体(「混合性性腺形成不全」とも呼ばれています)を持つ子どもの母として、私は直に感じています。神様ってユーモアのセンスをお持ちなのね!と。本当の話をさせてください。ダナを妊娠中、友達から、男の子がいい?女の子がいい?と訊かれていたものでした。もう男の子と女の子の子どもがいたということもあって、「(黒い瞳に黒い髪、それにおとなしい)お兄ちゃんに似た女の子か、(ブロンドの髪に青い瞳で美人さんの)お姉ちゃんに似た男の子がいい!」と、私は答えていました。ええ、そうです。私はどちらも授かったのです。いいえ、それ以上の子どもを!


 45,X/46,XY染色体を持つ子どもが、いつも見た目だけでは性別が分かりにくい外性器を持って生まれるわけではありません。実際、そういう子どものほとんどは完全に男性か女性の外見で生まれてくると言われています。判明するにしても、後になってからです。成長障害があったり、染色体障害を示唆する体の微かな徴候があったりして、お医者さんがどこか悪いところがあるのかもしれないなあと思われる程度とのことです。それより前に、まだ子宮の中にいる時点で、羊水検査(アムニオ)で診断されるお子さんも多いかもしれません。こういう検査と診断を受けたお母さんは、何か悪いところがありうるという、あまりにたくさんの情報にさらされるということもありますが、検査を受けずに、モザイク染色体を持つお子さんを産んだお母さん方のほとんどは、悪いばかりの情報にさらされることなく、完全で健康な男の子を授かっているのです。私は羊水検査は受けないことにしました。この検査に伴う流産のリスクを考えたからです。以前未熟児を出産したこともあって、またこんなことになって欲しくないと思ったからです。妊娠中は体が辛くて、出産3ヶ月前はベッドで横になることが多かったのですが、その後、ダナが生まれました。


 帝王切開を担当したお医者さんは、「女の子ですよ!」と手術室の中で叫ばれました。そして、シンとした静寂が。小さいけれど、ちゃんと息をされてますよと言って下さいました。すぐには泣かなかったのですが、ちゃんと泣き始め、私の緊張も和らぎました。私には長く感じられましたが、数分後、夫がやって来て、ダナは大丈夫だとささやきました。でも、赤ちゃんのプライヴェートな所に「ふくらみ」があるから、他の小児科医に見てもらうよう連れて行っていると。ええ、そうです。その後数時間の間、少なくとも9人のお医者さんが私と赤ちゃんがいる病室を行ったり来たりしました。途中(やっとふたりっきりになれた時)、赤ん坊をゆっくり見つめる時間がとれ、お医者さんにはすぐに染色体検査をしてもらうようお願いしました。担当のお医者さんは、その必要はない、多分曰く的な障害があって、それに対するお薬をもらって家に戻って、そこから病院に通えばいいと断言されましたが、私は染色体検査はやって欲しいと言い続けました。ダナを男の子だと思ったからではありません!先に息子と娘がいましたから、大切でプライヴェートな所がどんな形なのか、もうよく知っていて、率直に言うと、ダナのは型にはまった形ではなかったからです。


 身体検査をいくつか受けて、性腺が外側には見つからないということが分かりました*1。CAH(内分泌系の疾患です)*2の検査とともに、染色体も調べるため、採血がされました。最終的には私は、赤ちゃんと一緒にいて、まるで娘は本当に小さなペニスを持っているように見える(陰のうはない、膣もない)ということを、少しずつ受け入れて行きましたが、それまでは私は頭がグラグラして、血圧がはね上がっていました。次の朝、超音波検査を長い時間受け、赤ちゃんのちっちゃな子宮が見つかったと聞いて、娘の性別を出生証明書に書くことができると、やっとホッとできました。


 2週間後、血液検査の結果が出ました。CAHの可能性は否定され、混合性性腺形成不全であると分かりました。それが、性別が分かりにくい外性器の状態の原因だろうと。再度の血液検査で、この予想は確実なものになり、私たちの話し合いの内容は、ダナのこれからへの影響の話になって行きました。その中でも特に、「性腺芽細胞腫」と呼ばれる稀なガンのリスクについて。性腺が発育不全の場合、この深刻なリスクが高くなり、できるだけ早いうちに、発育不全の(奇形の)性腺の切除が強く求められるのです*3。この時点で、私たちが考えなければならないことは、ダナの外性器の外見のことではなく、命と健康の問題全体になっていきました。有名な小児泌尿器科医の先生に予約を取りました。大変な時間のコンサルテーションの後、ダナの内性器の切除と、外性器をより女性のようにするための手術の日付が決まりました。ですが、その手術では、片側の線状性腺しか見つかりませんでした。7年後、ヘルニア治療の際、外科医の先生が、ダナの「行方不明だった」もう一方の性腺を発見したのです。神様のおかげでしょう。その性腺は石灰化していて、ガンにはなっていませんでした。


 最初の外科手術は完全なものにはなりませんでした。そのため、ダナは9歳の時点でも、膣が外に届いていません。ここ数年、ダナとともにいることで私たちが学んできたのは、膣が外に届いているかどうかは、娘にとってさほど重要なことかもしれないし、そうじゃないかもしれない、それは私たちには分からないということです。実際のところ、然るべき時が来たら、娘は自分の体の状態の複雑さを全て知っていくことになりますし、(ISNA*4の人々を含む)然るべき人々の助けを借りながら、ダナ自身が自分の性のあり方を固めていくことになるでしょう。これからの手術をどうするのか、その方向を決めていくのは、全てダナに委ねられるでしょう。娘が自分で決めたことが、娘にとって正しいことなのですから。


 より女性の平均的な外性器の外見に見せるための手術をするかどうか、先に伸ばしたことを私が何か後悔しているか?後悔はひとつとしてありません。娘は今までのところ、なぜ自分のプライヴェートな所が、診察室の本に載っている写真のようではないのか、気にしたり、誤魔化したりしたことはありません。他の女の子の前で一緒に裸にならなきゃいけない時も、おばあちゃんやベビーシッターの人とお風呂に入る時も、いつもと変わりません。娘は元々無鉄砲なところがあって、バービー人形よりもミニカーを好むところがあります。ですので時々ふと思います。ある日娘が私の方を振り返って、「ねえ、僕は本当は男の子だよ。僕になんてことしてくれたんだ!」と言うんじゃないかって。もちろん可能性の話です。でも、もしそういうことがあったら、私はこう言おうと思っています。「うん。お母さんはあなたの母親で、9ヶ月間あなたをおなかに抱えていた。男の子、女の子どちらでもいいと思ってたわよ。あなたがあなたであることを望んでた。お母さんもね、実はちょっと腹を立ててた。でもあなたにじゃないわよ!あなたのことが大好きだし、壊れやすい器を抱えるように、そっとあなたの側についてきた。あなたの人生が素晴らしい経験にあふれるものになるように、ずっと見守ってきた。ケガしたらそこにキスして、ベッドの下にいたモンスターは追い払ってきたわ。だから、好きなだけお母さんに怒鳴ったら、どうか、あなたを抱きしめさせて。そして一緒に話して、泣いて、これからのことを一緒に考えたいの!」。神様のおぼしめしがあるなら、どうか…。


 「愛は忍耐である。愛はすべてを許す」という言葉があります。親御さんの皆さん。すべてを教えてもらったら、みなさんがお子さんに一番良いと思うことをして、どうか振り返らないでください!皆さんの親としての確信と、どれだけ事実とお子さんを受け止めていけるか、それが、皆さんのお子さんが、彼、彼女自身の独自の人生を如何に大切に生きていけるかということを決めていきます。お子さんの性分化疾患について、全く何もしてやれないという日々が続くこともあるでしょう。ですが、どうか、皆さんなりの毎日の生活の、何気ない普通の日常を楽しんでください。それは、分娩室を出た瞬間から始まります。今、ここのことを大切にしてください。お昼ごはんで粗相をしたり、鼻水を出していたりするかわいいお子さんの何気ない毎日を大切にしてください。そんなお子さんの何気ない毎日の瞬間瞬間。そこでは、皆さんのお子さんは、他のすべてのお子さんがかつてそうであり、これからもそうであろう、何気ない普通の子どもなのですから。


愛をこめて

パトリシア・ロバーツ
   

*1:訳者注:性腺(精巣)が見つからなかった、つまりこの時点では女性の可能性が非常に高くなったということと思われる

*2:訳者注:CAH;先天性副腎皮質過形成のこと。見た目だけでは性別がわかりにくい外性器の状態で生まれてくる赤ちゃんの大多数は、XX女児の先天性副腎皮質過形成で、その場合、早急な治療を行わないと命の危険性が非常に高いため、この検査は必ず行われます。

*3:訳者注:未分化な性腺の悪性腫瘍化率は非常に高い

*4:訳者注:現Accord Alliance。性分化疾患を持つ人や家族のための支援団体

アナ・リッパートさんからの手紙

アナ・リッパートさんからの手紙

親御さん皆さんへ


 私たちの娘アンジェラが、性分化疾患を持っていると診断されたのは、この子が12歳の時でした。娘が思春期になるまで、なにかおかしいとは全く思いもしませんでした。すぐに小児科医さんに電話して、次の日に病院に来るように言われました。検査の結果、娘の性器が他の女の子と違っていると分かりました。家に帰らず、そのまま小児内分泌科医のところに行くように予約が取られ、またたくさんの検査の結果、内分泌科医さんは私たち夫婦に、アンジェラの染色体が他の女の子と違っていること、外性器が「普通」に見えるよう、手術する必要があると話されました。数日中に、お医者さんは、シカゴの病院での美容手術の計画を立てられたんです。


 娘が手術を受けねばならないというお医者さんの考えを信じない理由は、私にはありませんでした。でも、今私が思っていることをその時考えていたなら、事態はもう少し違っていたかもしれません。


 どんな時もですが、セカンドオピニオンはいつも必要です。それか、こう自分に問いかけてみてください。「本当に手術は必要なのか?」と。私は後になって、手術はその時は必要なかった、アンジェラ自身が自分で決められる時を待つこともできたと思っています。そうすれば、その後の悲しみや不安の多くを感じずに済んだのではないかとも。


アナ・リッパート
   

(画像は、アンジェラ・リッパートさんと、妹のミッシェルさん、お父様、お母様です)。

ロズ・ヴァイスさんからの手紙

ロズ・ヴァイスさんからの手紙

親御さん皆さん


 今ちょうどこのハンドブックを読んでいらっしゃるのなら、とりあえず私に分かるのは、皆さん、性分化疾患を持っているお子さんがいらっしゃるのだろうということだけです。でも、私にははっきりと分かります。ご両親皆さんが体験されていることを。そして皆さんにお伝えしたいです。皆さんはひとりじゃない!って。


 夫と私は、子どもが生まれ、性分化疾患のことを聞いた時、香港に住んでいました。家族や友人から本当に遠く離れた地で、孤立感を深めるしかなかった私たちはどちらも、必要な検査をするために、アメリカに飛行機で戻る準備をする間しか、息をつける時はありませんでした。夫は全てを秘密にしておきたかったようですが、私は世界中に向けて叫びたい気持ちでした。赤ちゃんには既に女の子の名前を付けていましたので(性分化疾患のことが分かったのは3日後だったんです)、夫は赤ちゃんの性別を変更する可能性については考えたくなかったようです。夫は赤ん坊に美容外科手術をして*1、近しい家族にしかこのことを知らせたくないと思っていました。夫も私たちの娘のことでオロオロして、どうしていいか分からず、自分の感情に蓋をして、外科手術をすることについて私が疑問を持ったことや、子どもを女性として育てるのは間違いかもしれないという可能性については、聞きたがりませんでした。


 言うまでもないことですが、最初の1年は夫婦関係を試される時となりました。娘のクリトリスを美容外科手術させないことを私は決めたと言ったら、夫がどんな反応をするのか、最初の数ヶ月、私は怯えていました。きっと彼は怒るだろうと恐れていましたので、この事を夫に話したのは、手術当日の朝、手術同意書にサインをする時になりました。でも、びっくりしました!夫の方が、外科医よりも理解してくれたのです!性腺の切除には同意しましたが、これが正しいことであったかどうか、今でも分かりません。


 娘は今ほぼ4歳ですが、自分は男の子だと言う日が来るという確信を徐々に持っています。ですので、外性器の外科手術をせずに済んだことに感謝しています。夫は今でも、娘が少しずつ男の子のようになっていってることには否定的ですが、外性器の手術を勧めるお医者さんとの話し合いには、私の味方になってくれています。


 私の経験から、ご両親皆さんにはどんなアドヴァイスができるか?ご自分が感じる感情はどんなものでも大切にしてください。自分の直観を信じて、自分が正しくないと思うことを強要されないようにしてください。伴侶の方には、どれだけ強い悲しみ・嘆きを持っていらっしゃっていても、その悲しみに寄り添ってあげてください。私が夫と率直に話し合えるようになるのには、1年かかりました。私がサポートグループや調査に、彼も加わってもらいたいという思いもありますが、夫には、娘を愛してくれていること、娘には何が良いのか、私の直観を信頼してくれていることに感謝しています。


 私が皆さんにできる最大のアドヴァイスは、是非すぐにでもサポートグループに入ってくださいということです*2。サポートグループからは、お医者さんから教えられるよりも、たくさんのことを学びました。お子さんが持っていらっしゃる性分化疾患専門のサポートグループを探して、ご不安だと思いますが、是非ノックをしてみてください。同じような状況にあるご両親が、最も信頼できる友人になってくれると思います!


 今持っていらっしゃる辛い感情は、その内薄れていくということを覚えておいてください。お子さんが人とは違ってるんだなんてこと、完全に忘れられる日がきっと来ます。もちろん、お子さんが成長するにつれて、また違った感情や葛藤に出会い、直面していくことにもなるでしょう。でも、皆さんのお子さんへの愛情はより大きくなり、深呼吸して自分の思いを伝えていけば、辛い感情は過ぎ去っていくのだということがお分かりいただける日が来ると思います。


愛をこめて


ロズ・ヴァイス
   

*1:訳者注:欧米では当時、ペニスの小さな子どもは、染色体や内性器、ホルモンなどの指標や、統計的な医学的証拠如何にかかわらず、ペニスの大きさで男の子か女の子かを割り当て、ペニスの短い子どもはそれを外科手術で切除の上、女の子として育てるのが望ましいとされていました。ロズさんのお子さんの性別判定も、このような杜撰な割り当てに沿ったものでした。

*2:訳者注:日本でもいくつかの疾患ごとについて、親御さんの手作りによるサポートグループがあります。捨てアドレスで構いませんので、メールや返信欄(公開されません)にて私たちにお問い合わせください

この章について

この章について

 この章では、まず前半は、性分化疾患を持つお子さんを育てられた親御さんの皆さんに、自分たちの体験とそこから学んだことを短い手紙で書いていただきました。ここに掲載できる手紙の数では、親御さんたちのほんとうに様々な体験全てを伝えきることはできません。ですが、この手紙から、何らかの安心感や、共感、アイデアを見つけていただければ幸いです。また、自分自身の子育てについて、また別の親御さん皆さんの役に立つような手紙を書く参考にしていただければと思います。(皆さんご自身の考えや思い、体験の日記をつけていく方法については第5章で触れています)。こういう日記をつけておいて、もし息子さんや娘さんに渡すということがあるなら、お子さんも、自分の人生の様々な段階で、皆さん親御さんがどんなことを思い、考えてきたのか、理解できるということもあるでしょう。皆さんが、人生の様々な段階で決意してきたことを、お子さんが理解するのにも役立つかもしれません。お子さんが皆さんの辛い決意、皆さんがどれだけ大変な思いをしたこともあったか、お子さんが理解してくれれば、親子関係を強いものとしていくということもあるかもしれません。

 章の後半は、性分化疾患を持って大人になった人々からの、思い出や考えを書いた手紙です。最初私たちは、この手紙を書いていただく上で、「自分の親御さんにはどんなことを分かってもらいたかったですか?」ということをお聞きしていました。そうすれば、親御さん皆さんに重要な情報をお伝えできると思ったからです。ですが、その結果、多くの手紙に後悔したというお話が出てきました。私たちは、皆さんのお子さんに、後悔の多い人生を送っていただきたくありません!私たちとしては、こういう人たちの体験が、どのような間違いをしてはならないのか、知っていただくことに役立てればと思います。性分化疾患を持って大人になられた人の体験の中には、読むのが辛いものもあります。特に性分化疾患を持つ子どもの場合、自分のことや自分の思いを話しにくい雰囲気の中では、自尊心も育ちにくくなったり、傷つきやすくもなることもあるでしょう。これらの手紙を読むのは、お気持ちが強い時にしてください。

(大切なお願い)
 ここでご紹介する手紙は、皆さんがこうしなければならない、こうあらなければならないという、単純な話をお伝えするものではありません。そうではなく、この手紙を書かれた人の思いは、皆さんの子育てがより良いものになることを願ってのものなのだということを、どうか受け止めていただければと思います。

(画像は、コリン・ストールさんとモリー・ストラッタンさんご家族です)

「訊いてはいけない、知ってはいけない」

      

 今回は、CAISを持つ女性のライフストーリーをご紹介しましょう。ここまでハンドブックを読んでいただいた方には、性分化疾患のことは、本人に秘密にするのではなく、年齢に応じて話をしていくようにしようという方向で書かれていることにお気づきかと思います。これは、病院で何度も検査や手術を受けたりお薬を飲んだりと、なぜそうしなければならないのか分からない知らされないままにされてきて、かえって自分自身の存在に疑義や不安、時には恐怖を抱えてこざるを得なかった人々がいたという経緯があります。少し想像していただきたいのですが、子どもの頃から何故かわからないまま病院に行く、お父さん・お母さんに「なぜ?」と訊くと、ぎょっとした顔になったり涙が流れるのを見ることになる、いつしかこれは、訊いてはいけないこと、不安・恐怖に思うこととなっていき、下手をするとそれは自分自身の存在への不安・恐怖に繋がっていってしまうということもあったのです。これは単純に性自認の問題ということではなく、親子の関係、自分という「存在」「人生」についての話でしょう。性分化疾患”が”生きるのではなく、”自分自身が”自分自身の存在・人生を生きるという意味での話なのです。

 当然のことですが、体のことについて知らされるということは、ほとんどの人にとってはショックを受ける事態になるでしょう。これまでご紹介したライフストーリーでも、ほとんどの方が重いさまよいの時期を経てこられています。親御さんにとっても、とても重い決断をされることになるでしょう。だからこそ、話すにしても、同じような思いをされている方同士のサポートが必要になってくると思います。もちろん、ご家族やご本人の状況に応じて、話すか話さないか、話すとして、どのようなタイミングでどのように話すのか、それぞれに違ってくると思います。(後日、PAISを持つ女の子のお母さんが、娘さんに話をしていく体験談の翻訳をご紹介したいと思います)。私たちのプロジェクトは、どういう選択でも支持をしていきたいと思っています。

 今回ご紹介するライフストーリーは、様々な彷徨を経ながらも、自分自身で自分自身の存在を掴み、性分化疾患のことを自分を定義するものにするのではなく、むしろ自分の強さにされていった女性の物語です。

 自分たちが成長してどういう人間になりたいのか、自分自身の人生をどう生きるのか、そんな話をしたい時ってありますよね。そういう場面で、私と私の一番の友達は、まず自分がAISを持っていること、そしてAISが私のこれまでの成長や決断にどれほど影響してきたか、まずそこから話をはじめます。


 皆さんは、私と私のこれまでの「旅」のことをご存じないでしょうから、簡単にお話します。


 ヘルニアが見つかったのは5歳頃。両親は、私には子どもが持てないことを話しました。両親は、遺伝子のいたずらで私には「精巣性女性化症」があると告げられたのです。自分は何か違う何か特別で(でもどうしてそうなのか本当には知らないまま)、子どもを持つことができないということ以外は何も知らないまま私は成長しました。大学で取った社会学の講義で、その表層性に大きな感情と疑問、怒りの渦を感じるまでは。でも、その講義からの4年間で、私はXY染色体のことを知り、AISのことを知り、AISSGUSA*1を紹介してもらい、今に至っています。


 私は何よりも赤ちゃんを望んでいました。子どもの頃は、そのほとんどをネガティブな感情に流されるままにしてきました。だって、私の人生の目的は完全に自分自身の子どものお母さんになることだったのですから。養子で子どもをもらうのは私にはフェアではないように思い、そのことは考えたくありませんでした。自分の身体のことは言われた事以外は何も分からないままでした。私は特殊だ。私は人と違っている。生理は絶対来ない。子どもは絶対産めない。セックスは苦痛だからやめた方がいい。同じような状態の人には絶対会えない。そういうこと以外は何も。


 けれどもおかしなことに、私はそういう答え方を受け入れていました。「それだけのことだから」という答え方では絶対納得しないような好奇心旺盛な性格ではありましたが、私は確かにただの子どもでしかなかったのです。2005年秋、社会学の講義の最初にビデオを見たあの運命的な日まで、兵隊が従うのととても似たモットーを、私は自分に課していました。「聞くな話すな」と。もっとも、私の場合は「聞くな知るな」でしたが。何故自分が違っているのか、私は知りたくありませんでしたし、違うことを認めたくもありませんでした。自分がどんなふうに人と違うのか知らない限り、私は皆と同じでいられました。「何も特殊なところなんてないんだ」と。どんなことであっても私は普通でいたかったのです。何も知らないままの状態で、私は自分の人生の大半を送るようにしてきました。私は人に同情してもらいたかったし、人に注目してもらいたかったし、自分が持ち得ないものを(ただ自分が持ち得ないという理由だけで)望んでいました。今ではもう分かります。私は子どもを産みたいという希望に長い間すがりついていたのです。子どもを持てないなんてフェアじゃない、他の女性が使えるのと同じカードの手札を私も持っていたい、ただそんな理由だけで。自分は人と違うと言うことは分かっていても、何故そうなのか理解しないまま、私は大きくなってきました。理解してしまうと、私は自分が今までとは違ってしまうと思い込んでいたのです。


 どんなふうに自分は「違う」のか理解したとき、けれども私はそうは感じませんでした。私は依然としてちゃんと私のままでした。私が私であることには変わりなかったのです。いつも面白い話を集めるのが趣味で、聞いてくれる人に話をしたり歌ったり、タマネギが嫌いで犬とダンスが大好きな、女の子っぽい女の子のままでした。自分の子どもは産めないということを、ある時点で受け入れた、ひとりの女の子のままでした。私をじっと見守り続け、どうせ私は奇人ショーの見世物だと皆に思わせようとした時も、戸惑いながらも私を私のままに見てくれていた友達や家族、そして演劇への愛情が私の人生に新しい夢をもたらしてくれたこと、それにAISサポートグループとそれを作った本当に素晴らしい女性たちのおかげで、人生の大半で私の頭の上を覆っていた厚く暗い雲を、ついに晴らすことができたのです。


 最初AISは私にとっては大げさな自己憐憫でした。けれどもそれは今は私を定義するものではありません。もし信じていただけるなら、私はAISのことを好きになりつつあります。今まで絶対想像さえできないような形で、私を勇気付けさえしているのです。AISは、それなしでは分からなかっただろう新しい夢と展望を与えてくれました。健やかな謙虚さへの確信、常に物事を深く見続ける態度、自己研鑽の態度、それに絶対無理だろうと思っていた道を歩む勇気も、この一人の少女には決して想像もできなかった以上の愛情も。違いというものを受け入れにくそうな保守的な私の家族たちが見せてくれた無条件の愛情と受容。生まれる前から私のことを知っていて、自分で想像していた以上のすばらしい人生を描いてくれていた神様の無条件の愛(神は私が抱えられない以上のことは与えず、私が抱えるべきものの10倍、常に祝福してくれている)。私の秘密を共有してくれて、かつ時々褒めてくれるようになった以外は何も変わらないまま付き合ってくれた友達の深い愛情。様々な社会的・経済的・民族的立場にありつつ、似たような状態を抱え、ひとつ所に集えるようになり、ただお互いを支え愛している女性たちのグループから得られた、新しい姉妹のような愛情。そしてもちろん自分自身を愛することもです。AISのおかげで、私は自分で立つ力、自己を受け入れること、それに、無理だと思っていたような自己確信を手に入れました。AISによる経験が良くも悪くも、私を強い女性に成長させたと思います。今はただ、私を成長させてくれた皆さんに感謝したいです。私は自分の人生を愛しています。まだまだ障害はありますが、怖くはありません。私には愛がありますから。愛し、愛されるという。


 一番の友達と私がこのことについて話すとき、最初に言うことばで締めたいと思います。AISは私の個人的な成長と、自分で人生を開いていくことに、大きな影響を与えて*2くれました。私は神様に祝福されています。


 私の経験と自己実現を、皆さんと分かち合えればと思います。

      

*1:訳者注:[http://www.aisdsd.org/:title=AIS-DSDサポートグループ]の以前の名称

*2:訳者注:原語の”affect”は、「病気にかかる」という意味と「影響を与える」という意味がある

記録管理と日記の付け方(2)

日記の付け方

 親御さんの多くが、その時その時に思ったこと、感じたことを、日記につけておくのが役立ったとおっしゃっています。

 どんなことを書いておけばいいか、ヒントをのせておきます。   
   

  • 今日学んだこと。それについて感じたこと、思ったこと
  • ずっと頭のなかに残っている疑問   
  • 最近自分が感じていること、思っていること  
  • 昔書いていたことを読み返して、今あらためて思うこと   
  • 心配していること   
  • 希望   
  • 今日、子どもがしていたこと、話していたこと   
  • 他の生活上の出来事   
  • 今考える必要があること

 日記を付ける上で、無茶な目標は立てないでくださいね。書きたい時、書ける時だけでいいのです。

記録管理と日記の付け方(1)

記録管理のしかた

 100均などに行って、ファイルボックスを買ってきましょう。そこに書類を保存しておくのです。次のような資料をもらう度に、ファイリングしておくと後で役に立ちます。

  • 医療履歴(検査結果やX線写真のコピーなど)
  • 病院に行った時に付けたメモ
  • お医者さんの名刺
  • お子さんの性分化疾患について書いた手紙(学校の先生に知ってもらっておきたいことを書いた手紙や、サポートグループで会った人との文通など)
  • お子さんの性分化疾患について、皆さんが見つけた情報
  • 後々お子さんにとって大切だと思った資料なんでも

   
 ファイルボックスには、病気など自分に何かがあった時、お子さんのためにこの資料を残してあるという手紙を置いておいてもいいでしょう。このファイルボックスは、お子さんが成長したら、お子さんにとっても大切なものになるはずです。

AIS-DSDカンファレンス・イン・ボストン(1)

 去る7月18日〜21日までアメリカのボストンにて、AISなどの性分化疾患を持つ人々のサポートグループ、AIS-DSDサポートグループの年次大会「Orchids on the Harbor, 2013」が、「Becoming Me, Becoming We」をメッセージテーマに行われました。日本からも、AIS-DSDサポートグループジャパンの代表である女性の方と、このプロジェクトの代表が出席しましたので、少しご紹介できればと思います。

 AIS-DSDサポートグループは元々、AISなどの性分化疾患を持つ女性のためのサポートグループだったのですが、今回の17回目の大会からは、性分化疾患を持つ男性のミーティングも加わり、アメリカを中心に、カナダ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、そして日本から、総勢180人以上の子ども・大人の当事者の皆さん、更に家族、医療関係者が集まりました。

 分科会は全部で42ミーティング。性分化疾患の基礎講座からオペやホルモン療法など治療、いかに診断のトラウマを乗り越えていくかなどのカウンセリングなどについての医療関連、両親、子ども、きょうだいなど、それぞれのために用意された家族のためのミーティング、性分化疾患を持つ女性のためのミーティング、男性のためのミーティング、ユースのためのミーティング、また、家族から子どもに、本人から周りの人に性分化疾患のことを話すこと、結婚、養子縁組など、人生を生きていく上での課題についての皆さんの体験のシェアミーティング、そして、タレントショー(CAISを持つジャズシンガー、イーデン・アトウッドさんと、同じくCAISを持つ女性プロサックス奏者の方のコラボや、子どもたちのかくし芸が圧巻でした)に、カラオケ大会、ダンスパーティー(今風にヒップホップです)、ボストン水族館見学などのお楽しみ、更には、今でも「男でも女でもない性」「第三の性」と世間やマスコミから認識されることについて、いかに正しい知識と認識を広めていくか、マスメディア専門家を交えてのミーティングなど、様々多岐に渡るものでした。(夜はホテルのバーと部屋で飲み明かしm(_ _;)m)。

 参加者の方も、当事者の方では、まだ小さなお子さん(会場ではしゃぎまわっていて、とても楽しそうでした)から、ユース、成人、更には80歳近くになられるご夫婦、養子縁組をされて家族を作られた方、養子縁組をしたお子さんが性分化疾患であることが判明した家族、そして外科医、内分泌科医、臨床心理学者などの医療関係者など、本当に多岐にわたる人々が集まり、皆さん和気あいあいとした雰囲気で、笑ったり泣いたり語り合う姿が印象的でした。当事者、家族の別なく、やはり同じような体験をしてきたからでしょうか、私も含め、初めて会ったのに、当事者の方とも家族の方とも、みんな昔からの親友であるかのような雰囲気で打ち解けあえましたよ。日本語が少しできるという方もいて、全て英語のカンファレンスですが、心強いものもありました。英語ができなくても、この雰囲気を味わうだけでも十分に価値のあるものです。「患者会」と言うと、あるいはジメジメした暗いイメージを持たれることもあるかもしれませんが、個人主義のアメリカらしく、共通した体験がありながらも、性分化疾患の中でも様々な状態があることを認識し、それぞれの人生を認識し尊重し合い、積極的に(「性分化疾患を持った人として」ではなく)自分自身の人生を生きようとする雰囲気が最初からあり、とてもポジティヴなものでした。(AIS-DSDサポートグループジャパンは、とてもポジティヴなグループですよ)。

 ひとりで誰にも言えない、言わないまま抱え込んでいると、逆に同じ性分化疾患を持つ人の中でも、その個々の身体の状態、個々の人生の「違い」、そして更には、違いから浮かび上がる「自分自身」というものは認識・尊重できないように思います。そうなると、何かのイメージに囚われ、そのイメージに自分が生きられてしまい、自分自身の普通の人生・生活を見失いかねません。(カンファレンスでも、多くの方から、世間の持つイメージと自分自身の普通の人生・生活との乖離が話されていました)。集まることで、皆が普通の人生を普通に地道に生きていることが実感され、更に何かひとつのイメージで語れない個々の人生の違いが分かってこそ、益々自分自身になり、互いに手を取り合うことができるようになるのかもしれません。その意味でも、「Becoming Me, Becoming We」(「私」になる。「私たち」になる。)というメッセージテーマは大切なものに思えました。AIS-DSDサポートグループジャパンの代表の女性の方とも、まずはこの大会に日本からもたくさんの方が参加いただき、いつか日本でもこのような楽しい大会ができればねと話し合いました。

 またカンファレンスでは、まず写真などプライヴァシーを大切にする確認が行われ、女性だけのミーティング、男性だけのミーティングなど、安心・安全を守る仕組みがちゃんとなされていました。これはとても重要なことです。(逆に皆さんの元気な姿がご紹介できないのが残念です!)。

 今回私が参加した大会は、AISやスワイヤー症候群、卵精巣性性分化疾患尿道下裂などを持つ人々、家族のための大会でしたが、アメリカでは他にも、クラインフェルター症候群やトリプルX症候群・XYY症候群などの染色体に由来する体の状態を持つ男性・女性のためのカンファレンスや、先天性副腎皮質過形成(CAH)を持つ男性・女性のためのカンファレンスも各グループにて各地で行われています。日本からも参加者が増えればと思います。

 次回のレポートでは、サポートグループカンファレンスとともに同時に開催された医療カンファレンスと、そこでの私たちのプロジェクトとの話し合いを報告したいと思います。

 

AIS-DSDカンファレンス・イン・ボストン(2)

 AIS-DSDカンファレンスで、5歳のAISを持つ女の子にもらったミサンガです!とても元気で可愛い女の子さんでしたよ。ミサンガはカンファレンスのキッズイベントで作ったそうです。







 さて、AIS-DSDサポートグループ主催のカンファレンスに先立ち、ボストンのInn at Longwood Medical Center Best Westernにて、性分化疾患に関わる医療関係者のカンファレンス「Improving Collaboration and Communication for DSD Care 2013」が行われました。会場のホテルは、ハーヴァード大学医学部ヘルスサービスのひとつであるLongwood Medical Centerに併設されたホテルなのですが(全米から患者さんやご家族が集まるため、宿泊用のホテルがあるんです)、マクドナルドやKFCなども含めたフードコートもあって、日本との大きな違いに驚かされました。アメリカでは大きな病院ではよくあることらしいです。

 医療カンファレンスは、ハーヴァード大学医学部のMarc R. Laufer教授(婦人科)や、性分化疾患専門医療サービスであるSucceed ClinicのAmy Wisniewski医師(小児泌尿器科医・心理学)、そしてCAISを持つ娘さんのお母さんであり医師であるArlene Baratzさんらを中心に行われ、最先端の取り組みが報告されました。

 7年前、私が初めて訪れた2006年のサンフランシスコでの性分化疾患医療カンファレンスの頃と比べ、現在ではリサーチや医療とサポートグループのコラボレーションも格段に進んでいました。正確な診断(ちゃんとしないと命にかかわる場合もあります)のプロトコル、親御さんやご本人への診断の説明の仕方、ご本人やご家族へのサポートグループや臨床心理士さんによる心理的サポート、性別の判定(殆どの場合が判明します)、侵襲的ではない(神経節など体に害を及ぼすことができるだけ少ない)外科手術のプロトコルなど、多岐に及ぶ進展の報告がなされました。

 また、私たちの翻訳プロジェクトからは、「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の日本語翻訳版の報告を少しさせていただき、後で執筆者のひとりであるアーリーン医師に献呈させていただきました。性分化疾患医療の発展に寄与されてこられたアーリーンさん、お母さんとしての心配りも多くあったのでしょう、涙を流して喜んで下さいました。(私たちは7年前のサンフランシスコのカンファレンスで、当時の性分化疾患を持つ人々のサポートグループISNAの代表、シェリス・チェイス(ボー・ローラン)さんに翻訳のお約束をさせていただいたのですが、ボーさんは今回残念ながら欠席とのことで、ご友人の方に献呈させていただきました)。「性分化疾患:家族のためのハンドブック」日本語版は現在校正中です。定期的にこのブログでも引き続きupしていきますが、後日PDFでの完全版をダウンロードできるよう、こちらでご紹介する予定です。

 また、性分化疾患専門医療サービスであるSucceed ClinicのAmy Wisniewski医師から、医療関係者と家族のための最新の性分化疾患医療のガイドブック「Disorders of Sex Development, A Guide for Parents and Physicians」の翻訳のご依頼をいただきました。なんと、翻訳版は無料で提供してもらっていい(!)とのことでしたので、私たちの翻訳プロジェクトは次にこのガイドブックの翻訳を行って、ご家族の皆さんがご覧いただけるようにしていきます。時間はかかると思いますが、翻訳をお手伝いいただける方も新たに募集して、できるだけ早い時期に提供できればと思います。(原著英語の方は、Kindleで購入できます)。このガイドブックは、「家族のためのハンドブック」よりも少し詳しく、検査や医療の流れ、性分化疾患の種類・原因、子どものサポートの仕方、サポートの利用の仕方などが書かれています。

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

 更に、イギリスの医療関係者と性分化疾患を持つお子さんの親御さんたちが作った、性分化疾患医療のファクト・シート(検査や手術、ホルモン療法など、医療の流れそれぞれの場面に知っておくべき情報をまとめたもの)の翻訳許可も頂いています。こちらも、これから時間がかかるでしょうが、日本語版をご紹介できればと思います!

 翻訳をお手伝いいただける方、大募集中です!ぜひこちら(nexdsd(at)gmail.com)にメールをください!

病院に行く前の準備(2)

 次に、第3章「周りの人にはどう話すか?」で触れた質問リストを、短くまとめたものです。事前の質問リストにいくつか加えてみてください。


  1. この子の正確な診断名を知りたいんです。できれば書いていただいて、もっと勉強できる本や情報源があれば教えてほしんです。もしまだ分からないなら、どういう診断名だと今お考えか、教えていただけますか?
  2. この子の医療記録と検査の結果のコピーを全部いただきたいのですが、お願いできますか?
  3. (お子さんを見に来る医療スタッフがたくさんいるようであれば、こう訊ねてください)子どもをちゃんと見る必要のある担当の人は、誰ですか?できれば、出入りする人は少なくしてもらいたいんです。
  4. 同じような状況の他の親御さんに私の名前と電話番号を伝えてもらえませんか?それで、電話がほしいと言ってたと伝えてほしいんです。全く同じ状態の方でなくてもいいです。性分化疾患を持った人で、大人の人や年上の子どもさんのご両親と話をしてみたいんです。そうすれば、これから大丈夫だ、やっていけるって思えると思うんです。
  5. 性の問題や出生異常を扱った経験のあるカウンセラーさんや精神科医、それにソーシャルワーカーさんを紹介してもらえませんか?すごく混乱していて、(怖さや混乱、罪悪感、喜び、どうすればいいのかという思いなどが入り混じった)この気持ちを一緒に整理してくれる人にいてほしいんです。できれば、性分化疾患を持った人のケアにあたってる人とも話をしたいです。そうすれば、性分化疾患を持って子どもが成長していく時に起きるかもしれないことを勉強できますし。
  6. 子どもには、なにか緊急の医学的問題はありますか?もしそうなら、どんなものなのか、どういう治療選択肢があるんですか?今何もしないとどういう危険がありますか?
  7. この子の性別判定は(男の子か女の子)どちらですか?この子は将来どちらの性別になるんでしょうか?理由も教えていただければありがたいです。
  8. (もしお医者さんがお子さんの性器の見た目を変えるような性器手術を勧めてこられた場合は)、子どもの性器を手術で変える必要があるという理由はどんなものなんですか?手術をすることで長期的にこの子を支えられるというエヴィデンスはあるんですか?
  9. 性器の外見を変える手術を受けるかどうか、子ども自身が決められるまで待つことはできますか?
  10. このような手術は、先生は今まで何回経験されましたか?結果として良かったこと悪かったこと、それぞれ何回ほどでした?肉体的なことだけでなく、精神的なことでも。
  11. (もしお医者さんが、緊急に必要のないホルモン療法を勧めてこられる場合は)、このホルモン療法は今必要なんですか?自分にとってそれがいい方法なのかどうか子どもが自分で決められるまで待つことはできますか?今すぐやった方がいいのか、後の方がいいのか、それぞれのリスクや実証された利点はどんなものですか?
  12. この子と似たような状態の人で、先生が勧められる治療を受けてきた人と、別の方法を取った人をご紹介いただくことはできませんか?
  13. (もし皆さんが感情に圧倒されていたり、ストレスに苦しまれているようなら)、専門のメンタルヘルスサポートを紹介してもらえませんか?精神的に参っていて、誰かに支えてもらいたいんです。
  14. (もし皆さんがお気持ち的にも強くなって、お子さんの性分化疾患についても十分に知識を身につけるようになったら、お医者さんに)、先生の患者の親御さんで、誰か同じ状況の人と話をしたいと言う人がいらっしゃるなら、私の名前を伝えてもらえませんか?全く同じ症状の子どもの親御さんじゃなくてもいいんです。同じような状況にある親御さんの支援ができればと思うんです 。

病院に行く前の準備(1)

病院に行く前の準備

 第3章「周りの人にはどう話すか?」では、お子さんの医療担当者とどのように話をするか、詳しくお伝えしました。ここでは、病院に行く前の準備を短くまとめます。

  • お子さんには事前に、病院のことを話して、こころの準備をしてもらうようにしましょう。息子さんや娘さんに、病院でどのようなことをするのか、なぜお医者さんに、息子さんや娘さんのことを話すのか、教えてあげてください。病院に行くことについて、息子さんや娘さんに何か疑問があるかどうか、訊ねてあげてください。
  • お医者さんに話したいこと、訊いてみたいことを事前にリストアップしておきましょう。リストアップする時は、部屋に置き忘れることなどもあるかもしれませんので、メモなどの紙ではなく、専用のノートを作ってください。

やるべきこと・やってはいけないこと

やるべきこと・やってはいけないこと

 まずご両親自身が、ご無理はしないでください。飛行機のフライトアテンダントも、「緊急時には、子どもよりも前に、まず親御さんが酸素マスクを装着してください」と言うのと同じです。まずはご両親、自分自身のこころの状態を気遣ってください。臨床心理士を探すのもいいですし、患者会などのピアサポートにつながるのもいいでしょう。自分自身のことを考える時間を数時間取るために、友達や親戚の方にお子さんを少し預けるだけというのでもいいです。お子さんと同じように、皆さんも自身のことも気遣っていっていいのです。
   

  • 息子さんや娘さんの性分化疾患についてのお子さんの疑問には、すべて答えるようにしてください。正直に簡単に答えてあげてください。もし分からないことがあれば、担当のお医者さんに質問してください。
  • お子さんや、近い親戚の方、信頼できるご友人には正直に話をするようにしてください。本当のことや皆さんのお気持ちを閉じたところに閉じ込めておいても、良いことはありません。それと同時に、お子さん自身のプライヴァシーを尊重することも重要です。息子さんや娘さんが、今は言わないで、あの人には言わないでと頼むことがあれば、それを大切に尊重してください。
  • お子さんに、お子さんの性分化疾患のことを話すのは、息子さんや娘さんの希望に応じてにしてください。
  • お子さんの性分化疾患のことを、お子さんと自由に話せる時間を作るようにしてください。
  • もし可能なら、お子さんが、性分化疾患のことを熟知し、経験のあるメンタルヘルスの専門家(臨床心理士や精神科医、ソーシャルワーカーなど)と話ができる機会を時々作ってあげてください。
  • 性分化疾患を持った他の子どもと出会える機会を作ってあげてください。ピアサポートグループは、日本でもいくつか体の状態ごとに活動されているグループがあります。
  • 息子さんや娘さんの性分化疾患の医療履歴については、どんなことも誤魔化したり嘘をつかないようにしてください。
  • お子さん自身が自分でそうだと思う性別とは、逆の性別に無理やりしようとしないでください。
  • もし息子さんや娘さんが、誰かに嫌なことを言われたりされたりすることがあるようなら、必ず皆さんに相談するよう伝えておいてあげてください。
  • お子さんの外性器や他の体の状態に対して、「異常」という言葉は使わないでください。
  • お子さんに無理やり頻繁に、性分化疾患の話を強要することはしないでください。この問題について話せる安全な時間・空間(病院や患者会など)が与えられている時でもです。お子さんが話をしたくないと思う時にも、ずっとこの話ばかり取り上げるのは、逆に問題をこじれさせます。
  • お子さんの成長に応じて、息子さんや娘さんの持っている性分化疾患について、学んでいけるよう励ましてあげてください。