「男性・女性だけじゃない。インターセックスの人もいる」の何が間違っているか?
エミ・コヤマ(インターセックス・イニシアティヴ)
以下の手記は、低所得やホームレスの若者を支援する団体「Outside-In」に送った手紙です。(少し改変しています)。
Outside-In様 こんにちは
エミ・コヤマと申します。ポートランドを拠点に、インターセックスの状態を持つ子どもへの誤った医学的処置を終わらせる活動をしている団体、インターセックス・イニシアティヴのディレクターをしています。去る6月23日、Outside-Inさんのクリニックにお邪魔したのですが、そのことで手紙を書かせていただきます。
最初にクリニックを訪れた時、初診お伺い用紙の記入があったのですが、おかしなことに気がつきました。用紙の性別欄には、「男性」・「女性」とともに、「インターセックス」と「トランスジェンダー」が一緒くたに設けられた性別欄になっていたのです。これは恐らく、クリニックを訪れる多様な人々への配慮をしようという皆さんの熱意からくるものなのだろうなと思います。ですが実は、「インターセックス」を性別欄にリストするのは間違いなのです。いくつか理由をご説明します。
- 現在の標準的な医療体制では、外科医がインターセックスの状態を、まず性自認の問題だと考えてしまい、このことが、外科的に「普通」に見える性器に手術しないと、「正常」な性自認にならないという視野狭窄な考えを、もっとも良い医学的な介入だと思ってしまっているという状況があります*1。インターセックスの活動家が反対しているのはこのような誤解であり、患者さん個々の生活向上こそが、最も良い治療を測る究極の基準なのだという視点を持つようにと主張しているのです。(侵襲的な外科手術によって、体に深刻なダメージを受けたという例がたくさんありました)。「インターセックス」を性別のカテゴリーにしてしまうのは、インターセックスの状態をまず性自認の問題だと考えてしまう誤解に対して疑問を投げかけているインターセックス活動家の努力を否定してしまうことになります。
皆さんはきっと、これまでインターセックスについて、逆の情報をお聞きになっていたのでしょうね。それは十分あり得ることで、それはインターセックスの状態を持つ人々が自分自身の個々の声を伝える手段がなかったからです。過去、インターセックスについての情報は、インターセックスではない人々によって広められてしまっていました。最初は医者から、次にはジェンダー理論家から、それにトランスジェンダーの活動家、それにマスコミです*2。下に挙げた情報も是非ご覧になってください。それに、Outside-Inクリニックが、インターセックスの状態を持って生まれた人々にとって、安全なクリニックになっていくのにご協力できることがあれば、是非お知らせいただければと思います。
http://www.ipdx.org/articles/sexualtrauma.html
http://www.ipdx.org/articles/intersex-faq.html
http://www.ipdx.org/articles/hermaphrodites.html
追伸。用紙の性別欄以外の貴クリニックでの体験は本当に素晴らしいもので、大きな感謝をしたいと思います。私自身も長年医学的な興味という非人間的な視線に晒されてきて、医療というものを恐れるようになっていましたから。本当にありがとうございました。
エミ・コヤマ
インターセックス・イニシアティヴ(ポートランド)
http://www.ipdx.org/
原典の論文は、 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。