nexdsd JAPAN 性分化疾患:家族のためのハンドブック

Consortium on the Management of DSDが発行している「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の翻訳など、性に関する様々な体の発達状態を持つ人々と家族の方々をサポートできる情報をお送りします。

nexdsd JAPAN 総合サイトを開設しました!

これまでブログにて、「家族のためのハンドブック」やDSDを持つ人々やご家族のライフストーリーをご紹介してきましたが、「性に関する様々な体の発達状態(DSD)」について、より総合的なサイトを開設することになりました。

http://www.nexdsd.com/

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ネクスDSDジャパンは、世界のDSDサポートグループと連携し、主にDSDを持つお子さんとご家族のための医療ケア、子育ての疑問などについて、世界中のサポートグループからの情報を、日本に向けて翻訳・発信するプロジェクトです。

 性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」を指す医学用語ですが、決して単一の疾患ではなく、副腎形成異常や、アンドロゲンレセプターに関わるもの、性ホルモンに関わるものなど、約40~70種類以上ある様々な体の性の発達に関わる状態のことを言い、また近年欧米では、Differences of Sex Development(性に関する様々な体の発達状態:DSD)とも呼ばれています。

DSD性分化疾患)の医療ケアついては、これまで手術・ホルモン療法などが中心となりがちでした。しかし近年では、DSD性分化疾患)を持つお子さん、ご家族への社会的・心理的サポートの重要性が認識されつつあります。これを受けて世界では、DSD性分化疾患)を持つ人々がより良い人生を送っていけるよう、正しい知識に基づくクオリティの高いサポートグループがいくつも設立され、医療ケアも外科医・内分泌科医だけではなく、臨床心理士ソーシャルワーカー、遺伝カウンセラーなどを積極的に活用するチーム医療が始まろうとしています。

欧米のクオリティの高いDSDサポートグループでは、このような流れから、専門の医療従事者の方々との協働で、ご本人やご家族が必要とする、医療情報や子育て上の課題などを積極的に共有しようという動きが出ています。 ですが、このような情報は、日本では言語の関係で紹介されることが、これまでほとんどありませんでした。 

私たちネクスDSDジャパンは、このような海外で共有されている有益な情報を発信していきます。

 

以降もこのブログでは世界中のDSD情報を発信していく予定です。

「性分化疾患:家族と医療従事者のためのガイドブック」翻訳スタッフを募集します。

 以前にも触れましたが、ボストンでのAIS-DSDカンファレンスにて、性分化疾患専門医療サービスであるSucceed ClinicのAmy Wisniewski医師から、医療関係者と家族のための最新の性分化疾患医療のガイドブック「Disorders of Sex Development, A Guide for Parents and Physicians」の翻訳許可を正式にいただきました。(英語原著の方は、Kindleで購入できます)。このガイドブックは、「家族のためのハンドブック」よりも少し詳しく、検査や医療の流れ、性分化疾患の種類・原因、子どものサポートの仕方、サポートの利用の仕方などが書かれています。

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

 「家族のためのハンドブック」は翻訳に6年ほどかかりましたが、今回はできるだけたくさんの方にご協力いただき、一挙に翻訳ができればと思っています。性分化疾患医療に興味があって勉強したいけれども、どこから手を付ければいいか分からない、正確な知識を得たいと思っている医療従事者の方や学生の皆さんを特に募集できればと思っています。専門知識や用語がたくさん出てきますが、ご家族にも読んでいただけるよう、比較的平易に書かれています。辞書片手になんとか日本語にできるという程度で構いません。

 手伝ってみたいと思う方は是非、nexdsd(at)gmail.comまでメールをください!

 各章の目次とサマリーを翻訳しましたので、参考にしていただければと思います。

   

第1章 性分化疾患の基礎

  • 性分化疾患とは何ですか?
  • 性分化疾患はどのように判明するのですか?
  • 子どもの性分化疾患の原因は何ですか?
  • 私の子どもは男の子なんですか?女の子なんですか?
  • 私の子どもは健康で幸せな人生を送れるのですか?

(サマリー)
 自分の赤ちゃんが性分化疾患を持っていると分かった時、親御さんが不安や罪悪感、あるいは怒りさえ感じられるのは十分理解できることです。どのように性分化疾患が起こったのか知ること、子どものこの状態について、親御さんがなにか間違ったことをしたために起こったのでは決してないということを理解してもらうのが重要です。子どもが幸せで健康な人生を送れることをちゃんと理解してもらうために、親御さんが子どもの健康についての情報を十分得られ、経験に裏打ちされた医療用語を伝えていくようにしましょう。子どものケアとサポートに関わる方針決定に家族が参加することも大切です。


 ケアとサポートの方針決定のひとつに、子どもを育てる上での最適な性別を決定することがあります。この決定には、性分化疾患それぞれのタイプでの心理的発達について分かっていることが、考慮されねばなりません。養育性別や、ケアやサポートの方針の決定をしていかねばなりませんが、ご家族は、赤ちゃんを迎え入れ、慈しんであげていってください。



第2章 私の子どもはどのタイプの性分化疾患を持っているのですか?

  • 46,XXDSDとは何ですか?
  • 46,XYDSDとは何ですか?
  • 他にはどのようなタイプの性分化疾患がありますか?

(サマリー)
 「性分化疾患」とは、広く多数の医学的状態を包括するものです。ここでは、性分化疾患を(1)46,XX DSD、(2)46,XY DSD、(3)その他のタイプのDSDと、大きく3つのグループに分けています。これは、とりあえずも、これらの体の状態についていかに考えるか簡単にまとめるための分類です。必要とされる特定の検査、推奨される医療的アプローチは、お子さんの状況に最も合致する分類によって、決まってきます。第3章では、患者さんのケアチームが、どのようにしてお子さんの性分化疾患のタイプを特定するか、そして、なぜその性分化疾患が最初の段階のレベルで起こっているのか正確に特定するために、どのような検査が必要なのか説明しています。



第3章 新生児はどのように診断されるのですか?

  • 様々なタイプの性分化疾患
  • 診断を確定するのにどのような検査があるのですか?
  • 検査はどのように行われるのですか?
  • 検査をして、私の赤ちゃんの状態のどういうことが分かるのですか?

(サマリー)
 赤ちゃんがすぐには性別を特定できない外性器を持って生まれた場合、そのお子さんの最善のケアプランを確立するために、一連の検査が行われます。有効な検査がすみやかに開始されるのが重要で、医師は必要な期間内に、その新生児の性分化疾患に関連した情報を集めることに努めねばなりません。ですが、臨床検査や画像解析は、合理的な段階をちゃんと踏むようにし、慌てて不完全、不正確な結論や決断を下してしまわないようにしなければなりません。慌てて不完全・不正確な結論、決断を下してしまうことは、ご家族の不安・重圧を不要に高め、子どもの医療マネージメントを誤ったものにするだけです。


 性分化疾患の3タイプの分類(46,XX、46,XY、その他)は、あくまでごく簡単なものに過ぎません。性分化疾患のより正確な特定診断は、大変複雑なものになります。正確な特定診断がすぐに出なくても、諸検査から判明した情報は、性別判定と医学的・外科的治療プランを明らかにしてくれるでしょう。お子さんのケアチームは、ご家族がお子さんにとって最善の判断ができるよう、お子さんにどのような検査が必要なのか、なぜ検査結果を伝えるのか、伝えるべきなのか、ご家族に説明せねばなりません。もしご家族の方で、必要な情報をもらっていると感じられないようであれば、お子さんの担当医にいろいろ質問してください。たいていの場合、ご家族と良好なやり取りのできる人が最低でもひとりはケアチームにいるはずです。この人が、ご家族が情報を必要とする時のキーパーソンになるでしょう。



第4章 性分化疾患での「心の性別」の発達

  • 「心の性別」とはなんですか?
  • 性分化疾患を持つ人の長期的な「心の性別」の発達について分かっていること

(サマリー)
 性分化疾患を持つ赤ちゃんが生まれた際、その子の性別を判定するのは緊張の多いものになりえます。性分化疾患を持って成長した成人の長期的な性別同一性がどのように発達していくのかという知見は、赤ちゃんが男性か女性か判定する際、有効です。この知見は、ご家族や担当医師が、性別判定に関する最も適切な判断を行うのに役に立つでしょう。


 一般的に、46,XX DSDを持つ赤ちゃんは、このタイプの赤ちゃんの大多数が女性の性別同一性を確立しますので、女性として育てられます。 47,XY DSDを持つ赤ちゃんは、(1)完全にテストステロンとDHTが生成されない場合、もしくは(2)CAISの場合、この体の状態を持つ人は大多数が女性の性別同一性になりますので、女の子として育てられます。47,XY DSDで(3)精巣ホルモンが一部しか生成されない、もしくは(4)PAISの場合、外性器の男性化の度合いによって、男性かもしくは女性として育てられます。そして、この(3)(4)2つの体の状態の場合、育ての性別に不満足を持つ人が出てくることもあることを、ご家族は理解しておかねばなりません。この可能性について理解しておくことで、お子さんに対するこれからの医学的・外科的治療の方針を柔軟なものにできます。最後に、5α還元酵素欠損症と17βヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損による46,XY DSDを持つ新生児は、男性の性別同一性になる可能性が高いため、男の子として育てられることが推奨されます。


 ご家族と担当医が、性分化疾患を持つお子さんの最適な性別判定に合意したなら、次は、医学的・外科的治療や日常のお薬なども含めた長期単位でのケアプランを立てていく段階です。第5章では、性分化疾患を持つ幼児・子どもに推奨される一般的な医学的・外科的治療と、それぞれの良い点と悪い点について述べていきます。



第5章 治療選択肢の理解

  • 性分化疾患を持つ子どもには、どのような治療選択肢があるのですか?
  • 性分化疾患を持つ子どもには、どのような外科手術の選択肢があるのですか?
  • 治療の良い点と悪い点は?

(サマリー)
 性分化疾患について、医学的・外科的治療の選択肢は、診断の種類や養育性別によって様々に異なってきます。ここでは、性分化疾患を持つ子どもの親御さんが考えられる一般的な治療のあり方について述べました。全く治療しないということが子どもにとって最も良いという場合もありますし、すぐに治療に当たることが必要な場合もあります。この章では、親御さんがお子さんのケアチームと共に、娘さんや息子さんにとって最も良い、医学的・外科的長期プランを立てていくのに役立つガイドになっています。



第6章 子どもに性分化疾患のことを伝える

  • 私の子どもは健康に育ちますか?
  • なぜたくさんのお医者さんが関わるのですか?
  • 私の子どもは他の人と同じように成長していきますか?

(サマリー)
 お子さんがお医者さんや病院を怖がる場合は、お子さんに、あなたは十分健康だと教えてあげて、自分のからだにちゃんと自分で気を配っているということを褒めてあげて、思春期に入ると起こるだろう身体の変化へのこころの準備をしてあげれば、少し不安が和らぐでしょう。息子さんや娘さんに、なぜお医者さんに会わなくちゃいけないのかを教えてあげて、息子さんや娘さん自身も自分の健康ケアに積極的に加われるようサポートしてあげてください。その前後を通して、お子さんには自分の体は全然恥ずかしいものじゃないんだということを分かってもらうようにしてください。お子さんにとって最も良いのは、お子さんが自分の性分化疾患についてちゃんと知ること、そして、誰かと愛し愛される大人になっていくことなのです。



第7章 性分化疾患を持つ人の長期的な健康状態

  • 性分化疾患を持つ人の平均寿命は?
  • 私の子どもは、性分化疾患が原因の他の医学的リスクがありますか?
  • ホルモン補充療法の長期的な健康状態に対する効果は?

(サマリー)
 性分化疾患を持つほとんどの人の平均寿命は、他の人と変わりありません。ですが、デニス・ドラッシュ症候群やフレイジャー症候群など、46,XY DSDに関わる癌のリスクの増加、クラインフェルター症候群やターナー症候群などでの心臓血管疾患など、幼くして死亡するリスクのある性分化疾患もいくつかあります。平均寿命が短くとも、注意深い医療ケアによって、ある特定の性分化疾患を持っていることによる合併症のリスクを減らし、寿命を長くすることはできます。こういった理由から、性分化疾患を持つ人のケアを熟知したヘルスケア専門家による、生涯を通した注意深いモニタリングを受けることをおすすめします。私たちもじっくりと、これらの状態を持つ人の体の状態、その流れについて学んでいこうと思います。



第8章 こういう時どうすれば?

  • セカンドオピニオンを取るべきですか?
  • お医者さんを変えたいのですか?
  • もし間違った性別が判定されていたら?
  • もし子どもが、性別が間違っていると思っている場合は?
  • 子どもを研究調査に参加させるべきですか?

(サマリー)
 性分化疾患を持つ子どものご家族が全員、この章で述べたような状況になるというわけではありません。ですが、ご家族は皆さん、お子さんを人生の中で支えていく、ひとつひとつのステップについて意識しておいたほうがいいでしょう。セカンドオピニオンを取ったりお医者さんを変えることは、皆さん(とお子さん)の権利であり、ここでご紹介した情報が、ご家族が次のステップに行く時にお役に立てるものであればと思います。性分化疾患を持つまだ小さな子どものご家族にとっては、お子さんの性別変更はあり得ることです。そして、その時期が早いほど、お子さんやご家族にとってより良いと私たちは考えています。ある程度お子さんが大きくなった場合は、本人の希望なしに、私たちが性別変更を勧めることはありません。そういう場合は、次のステップに行く前に、メンタルヘルスの専門家と本人を共にした見極めが必要でしょう。



第9章 ピアサポート

(サマリー)
 性分化疾患を持つ人は、孤立感を抱くことが多く、心の性別や愛情のこと、妊孕性といった問題を話し合うことに心傷つかれることもあり得ます。あなたはひとりじゃないんだ、性分化疾患を持つ多くの人々が、診断や治療の必要性にも関わらず、力強く生きているのだということを知ってもらえればと思います。性分化疾患を持つ他の人々と出会う一番いい方法は、質の高い全国・地域ごとのピアサポートグループのメンバーになるか、自分自身でそういうグループを作ることです。他の人と会ったり、自分の経験を話すのは、最初はとても怖いことだと思います。でも、そうすることで、支持的な環境の中でひとりじゃないと感じ、自分の思い・考えをを自由に話せるようになるのです。この章を読んで、皆さんが自分はひとりだと感じる必要はないのだと思っていただければと思います。性分化疾患を持つ人が、皆さんを助けることになります。そしてそういう人たちと出会えるのは、ピアサポートグループを通してなのです。
    


 欧米のAISDSD家族のためのメーリングリストより、親御さんからの推薦文です。

 「性分化疾患:家族と医療従事者のためのガイドブック」は、DSDの診断を受けたお子さんを持つ、家族の困惑や不安をよく理解している、熟練の専門チームによって書かれた初めての書籍です。この本は、DSDの持つ生物学的側面と心理社会的側面について知っておきたいことを、家族の皆さんにも理解していただけるよう、平易かつ簡潔な文章で書かれています。まず最初のページで、お子さんの将来の幸せと健康を保証した上で、分かりやすい図表やイラストで、DSDの状態がどのように起こるのか明確に説明しています。診断分類や対応方、更に心の性別やセクシュアリティ、性別変更の可能性といった主要な課題も率直に説明されており、これらの難しい問題も、神話ではなく実際的に事実に基づいて詳しく説明されていますので、家族や医療従事者も、お子さんそれぞれにとってどうしていくのが一番いいのか、考えやすくなるでしょう。著者はピアサポートの重要性についても特に注目していて、質の高いサポートグループへのアクセス方についても言及してくれています。家族それぞれの価値観や文化を尊重し、ケアのあり方の選択肢を偏ることなく提示してくれています。医療従事者の中でも様々な意見が出てくるでしょうが、この本は家族とお子さん、医療従事者とを結びつけ、満足できる解決方へと辿り着くための、ユニークで理にかなったアドバイスを与えてくれるでしょう。   


他にも翻訳したい文献や資料はたくさんあります。是非メールをください!

先天性副腎皮質過形成(CAH)ガイドブック

CONGENITAL ADRENAL HYPERPLASIA:A Parents' Guide

CONGENITAL ADRENAL HYPERPLASIA:A Parents' Guide


クラインフェルター症候群やXYY症候群、XXX症候群などのガイドブック


完全型アンドロゲン不応症(CAIS)ハンドブック

C O M P L E T E   A N D R O G E N   I N S E N S I T I V I T Y   S Y N D R O M E

G a r r y L. Wa r n e, M B B S, F R A C P
Associate Professor and Director
Department of Endocrinology and Diabetes
Royal Children’s Hospital
Parkville, Victoria, Australia

ようこそ!「性分化疾患:家族のためのハンドブック」へ!

ようこそ!「性分化疾患:家族のためのハンドブック」へ!     
   
 このブログは、アメリカで発行されている「DSD Guidelines Handbook for Parents」などの日本語訳を行なっていくプロジェクトです。

 性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」を指す医学用語ですが、決して単一の疾患ではなく、副腎形成異常や、アンドロゲンレセプターに関わるもの、性ホルモンに関わるものなど、約70種類以上ある様々な、身体の性の発達に関わる障害のことを言います。

 この「DSD Guidelines Handbook for Parents」は、ローソン・ウィルキンス小児内分泌科学会(LWPES)や、アメリカ小児医学会(AAP)ヨーロッパ小児内分泌学協会(ESPA)、当事者団体であるISNA、日本小児内分泌学会性分化委員会などのメンバー・専門家ら約40人以上が集まった2006年の国際会議において合意・採択された、性分化疾患に関わる医療の新しいガイドラインに合わせて作成されたものです。

 このハンドブックは、性分化疾患を持つ子どもの親御さんたち、成人になった性分化疾患を持つ皆さん、そのケアに当たる臨床医、そして支援者の方々の多大なる協力によって作成されました。性分化疾患を持つお子さんの親御さんにしか分からないような、日々のさまざまな思い、どうすればいいのだろうというお気持ち・疑問が、日常レベルから記述されているのが特徴です。

 性分化疾患を持つお子さんの親御さんのみなさんには、役に立つ情報や具体的なアドバイスがたくさん書かれているのですが、日本では長らく翻訳が出されていませんでした。

 今回、私たちのプロジェクトでは、微力ではありますが、親御さんやお子さんのお役に立てるよう、このハンドブックの日本語訳を少しずつ行い、このブログで公表できればと思っています。何分、ボランティアによるプロジェクトですので、定期的にupできるとは限りませんが、ご期待に添えればと思っています。

 また、このプロジェクトでは、家族のためのハンドブックに限らず、欧米の様々な性分化疾患サポートグループで公表される資料もあわせて、翻訳していこうと思いますので、ご期待ください。

 お問い合せはdsdhandbook(at)gmail.comまで。なお、個別の健康問題、身体問題についての質問にはお答えできませんので、ご了承ください。

(性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)
   

AIS-DSDカンファレンス・イン・ボストン(1)

 去る7月18日〜21日までアメリカのボストンにて、AISなどの性分化疾患を持つ人々のサポートグループ、AIS-DSDサポートグループの年次大会「Orchids on the Harbor, 2013」が、「Becoming Me, Becoming We」をメッセージテーマに行われました。日本からも、AIS-DSDサポートグループジャパンの代表である女性の方と、このプロジェクトの代表が出席しましたので、少しご紹介できればと思います。

 AIS-DSDサポートグループは元々、AISなどの性分化疾患を持つ女性のためのサポートグループだったのですが、今回の17回目の大会からは、性分化疾患を持つ男性のミーティングも加わり、アメリカを中心に、カナダ、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、そして日本から、総勢180人以上の子ども・大人の当事者の皆さん、更に家族、医療関係者が集まりました。

 分科会は全部で42ミーティング。性分化疾患の基礎講座からオペやホルモン療法など治療、いかに診断のトラウマを乗り越えていくかなどのカウンセリングなどについての医療関連、両親、子ども、きょうだいなど、それぞれのために用意された家族のためのミーティング、性分化疾患を持つ女性のためのミーティング、男性のためのミーティング、ユースのためのミーティング、また、家族から子どもに、本人から周りの人に性分化疾患のことを話すこと、結婚、養子縁組など、人生を生きていく上での課題についての皆さんの体験のシェアミーティング、そして、タレントショー(CAISを持つジャズシンガー、イーデン・アトウッドさんと、同じくCAISを持つ女性プロサックス奏者の方のコラボや、子どもたちのかくし芸が圧巻でした)に、カラオケ大会、ダンスパーティー(今風にヒップホップです)、ボストン水族館見学などのお楽しみ、更には、今でも「男でも女でもない性」「第三の性」と世間やマスコミから認識されることについて、いかに正しい知識と認識を広めていくか、マスメディア専門家を交えてのミーティングなど、様々多岐に渡るものでした。(夜はホテルのバーと部屋で飲み明かしm(_ _;)m)。

 参加者の方も、当事者の方では、まだ小さなお子さん(会場ではしゃぎまわっていて、とても楽しそうでした)から、ユース、成人、更には80歳近くになられるご夫婦、養子縁組をされて家族を作られた方、養子縁組をしたお子さんが性分化疾患であることが判明した家族、そして外科医、内分泌科医、臨床心理学者などの医療関係者など、本当に多岐にわたる人々が集まり、皆さん和気あいあいとした雰囲気で、笑ったり泣いたり語り合う姿が印象的でした。当事者、家族の別なく、やはり同じような体験をしてきたからでしょうか、私も含め、初めて会ったのに、当事者の方とも家族の方とも、みんな昔からの親友であるかのような雰囲気で打ち解けあえましたよ。日本語が少しできるという方もいて、全て英語のカンファレンスですが、心強いものもありました。英語ができなくても、この雰囲気を味わうだけでも十分に価値のあるものです。「患者会」と言うと、あるいはジメジメした暗いイメージを持たれることもあるかもしれませんが、個人主義のアメリカらしく、共通した体験がありながらも、性分化疾患の中でも様々な状態があることを認識し、それぞれの人生を認識し尊重し合い、積極的に(「性分化疾患を持った人として」ではなく)自分自身の人生を生きようとする雰囲気が最初からあり、とてもポジティヴなものでした。(AIS-DSDサポートグループジャパンは、とてもポジティヴなグループですよ)。

 ひとりで誰にも言えない、言わないまま抱え込んでいると、逆に同じ性分化疾患を持つ人の中でも、その個々の身体の状態、個々の人生の「違い」、そして更には、違いから浮かび上がる「自分自身」というものは認識・尊重できないように思います。そうなると、何かのイメージに囚われ、そのイメージに自分が生きられてしまい、自分自身の普通の人生・生活を見失いかねません。(カンファレンスでも、多くの方から、世間の持つイメージと自分自身の普通の人生・生活との乖離が話されていました)。集まることで、皆が普通の人生を普通に地道に生きていることが実感され、更に何かひとつのイメージで語れない個々の人生の違いが分かってこそ、益々自分自身になり、互いに手を取り合うことができるようになるのかもしれません。その意味でも、「Becoming Me, Becoming We」(「私」になる。「私たち」になる。)というメッセージテーマは大切なものに思えました。AIS-DSDサポートグループジャパンの代表の女性の方とも、まずはこの大会に日本からもたくさんの方が参加いただき、いつか日本でもこのような楽しい大会ができればねと話し合いました。

 またカンファレンスでは、まず写真などプライヴァシーを大切にする確認が行われ、女性だけのミーティング、男性だけのミーティングなど、安心・安全を守る仕組みがちゃんとなされていました。これはとても重要なことです。(逆に皆さんの元気な姿がご紹介できないのが残念です!)。

 今回私が参加した大会は、AISやスワイヤー症候群、卵精巣性性分化疾患、尿道下裂などを持つ人々、家族のための大会でしたが、アメリカでは他にも、クラインフェルター症候群やトリプルX症候群・XYY症候群などの染色体に由来する体の状態を持つ男性・女性のためのカンファレンスや、先天性副腎皮質過形成(CAH)を持つ男性・女性のためのカンファレンスも各グループにて各地で行われています。日本からも参加者が増えればと思います。

 次回のレポートでは、サポートグループカンファレンスとともに同時に開催された医療カンファレンスと、そこでの私たちのプロジェクトとの話し合いを報告したいと思います。

 

AIS-DSDカンファレンス・イン・ボストン(2)

 AIS-DSDカンファレンスで、5歳のAISを持つ女の子にもらったミサンガです!とても元気で可愛い女の子さんでしたよ。ミサンガはカンファレンスのキッズイベントで作ったそうです。







 さて、AIS-DSDサポートグループ主催のカンファレンスに先立ち、ボストンのInn at Longwood Medical Center Best Westernにて、性分化疾患に関わる医療関係者のカンファレンス「Improving Collaboration and Communication for DSD Care 2013」が行われました。会場のホテルは、ハーヴァード大学医学部ヘルスサービスのひとつであるLongwood Medical Centerに併設されたホテルなのですが(全米から患者さんやご家族が集まるため、宿泊用のホテルがあるんです)、マクドナルドやKFCなども含めたフードコートもあって、日本との大きな違いに驚かされました。アメリカでは大きな病院ではよくあることらしいです。

 医療カンファレンスは、ハーヴァード大学医学部のMarc R. Laufer教授(婦人科)や、性分化疾患専門医療サービスであるSucceed ClinicのAmy Wisniewski医師(小児泌尿器科医・心理学)、そしてCAISを持つ娘さんのお母さんであり医師であるArlene Baratzさんらを中心に行われ、最先端の取り組みが報告されました。

 7年前、私が初めて訪れた2006年のサンフランシスコでの性分化疾患医療カンファレンスの頃と比べ、現在ではリサーチや医療とサポートグループのコラボレーションも格段に進んでいました。正確な診断(ちゃんとしないと命にかかわる場合もあります)のプロトコル、親御さんやご本人への診断の説明の仕方、ご本人やご家族へのサポートグループや臨床心理士さんによる心理的サポート、性別の判定(殆どの場合が判明します)、侵襲的ではない(神経節など体に害を及ぼすことができるだけ少ない)外科手術のプロトコルなど、多岐に及ぶ進展の報告がなされました。

 また、私たちの翻訳プロジェクトからは、「性分化疾患:家族のためのハンドブック」の日本語翻訳版の報告を少しさせていただき、後で執筆者のひとりであるアーリーン医師に献呈させていただきました。性分化疾患医療の発展に寄与されてこられたアーリーンさん、お母さんとしての心配りも多くあったのでしょう、涙を流して喜んで下さいました。(私たちは7年前のサンフランシスコのカンファレンスで、当時の性分化疾患を持つ人々のサポートグループISNAの代表、シェリス・チェイス(ボー・ローラン)さんに翻訳のお約束をさせていただいたのですが、ボーさんは今回残念ながら欠席とのことで、ご友人の方に献呈させていただきました)。「性分化疾患:家族のためのハンドブック」日本語版は現在校正中です。定期的にこのブログでも引き続きupしていきますが、後日PDFでの完全版をダウンロードできるよう、こちらでご紹介する予定です。

 また、性分化疾患専門医療サービスであるSucceed ClinicのAmy Wisniewski医師から、医療関係者と家族のための最新の性分化疾患医療のガイドブック「Disorders of Sex Development, A Guide for Parents and Physicians」の翻訳のご依頼をいただきました。なんと、翻訳版は無料で提供してもらっていい(!)とのことでしたので、私たちの翻訳プロジェクトは次にこのガイドブックの翻訳を行って、ご家族の皆さんがご覧いただけるようにしていきます。時間はかかると思いますが、翻訳をお手伝いいただける方も新たに募集して、できるだけ早い時期に提供できればと思います。(原著英語の方は、Kindleで購入できます)。このガイドブックは、「家族のためのハンドブック」よりも少し詳しく、検査や医療の流れ、性分化疾患の種類・原因、子どものサポートの仕方、サポートの利用の仕方などが書かれています。

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

Disorders of Sex Development: A Guide for Parents and Physicians (A Johns Hopkins Press Health Book)

 更に、イギリスの医療関係者と性分化疾患を持つお子さんの親御さんたちが作った、性分化疾患医療のファクト・シート(検査や手術、ホルモン療法など、医療の流れそれぞれの場面に知っておくべき情報をまとめたもの)の翻訳許可も頂いています。こちらも、これから時間がかかるでしょうが、日本語版をご紹介できればと思います!

 翻訳をお手伝いいただける方、大募集中です!ぜひこちら(nexdsd(at)gmail.com)にメールをください!

ドキュメンタリー「ミー・マイセックス&アイ」(1):性分化疾患を持つ人々の物語

   
 イギリス ビービーシー・ワンにて、2011年10月11日に放映された、様々な体の性の発達状態(性分化疾患)を持つ人々のドキュメンタリー「ミー・マイセックス&アイ」の日本語字幕版です。

 このドキュメンタリーでは、見た目だけではすぐに性別が分からない状態の外性器を持って生まれた赤ちゃんのお母さん、先天性副腎過形成(CAH)を持つ女性ジャネットさん、完全性アンドロゲン不応症(CAIS)を持つ女性ケイティさん、重度の尿道下裂を持って生まれた男性タイガーさん、MRKHを持つ女性ジェスさんとそのボーイフレンド、部分型アンドロゲン不応症(PAIS)を持つ女性が、自らのパーソナルストーリーをお話しされています。

 性分化疾患には様々なものがあること、状況もそれぞれに違うこと、命を脅かす危険な状態もあること、手術の必要性・不必要性の難しさなど、登場される人々のパーソナルストーリーを通して、何かひとつの結論に簡単に片付けない、その複雑さを複雑なままに描く良質のドキュメンタリーです。

 今回ご紹介する(1)では、

見た目だけではすぐに性別が分からない状態の外性器を持って生まれた赤ちゃんのお母さん(インタビューを再現した映像になっています)が、その時の、これから親子でどうしていけばいいのかという苦悩と困惑を。

また、先天性副腎皮質過形成(CAH:命にも関わる疾患です)により、クリトリスが大きな状態で生まれた女性ジャネットさんが、CAHの怖さと、自分が生まれた時の家族の困惑を。

そして、男性の性分化疾患のひとつである尿道下裂でも、二分陰嚢など重度の外性器発達不全の状態で生まれたタイガーさんが、相談に来られる性分化疾患を持つ人やご家族の思いをお話されています。


 ご家族やご本人には、辛い内容が含まれている場合もあります。

「アンドロゲン不応症と性分化疾患のサポートグループ」HP開設

     
 日本でもいよいよ「アンドロゲン不応症(AIS)の女性とその家族のためのサポートグループのホームページ」が開設されました!

 アンドロゲン不応症(AIS)の女性やその家族のためのサポートグループは、欧米ではいくつか精力的に活動されていましたが、日本では恐らく初めてのサポートグループになります。アメリカのAIS/DSD Support Group for Women and Familiesとも連携を取っておられますので、、世界中のAISを持つ女性とその家族、そして理解のある医療従事者とつながっていく機会となるでしょう。

 私たちの「性分化疾患:家族のためのハンドブック」翻訳プロジェクトも連携を取らせていただけることになりました。AISを持つ女性の方のライフストーリーなどをこれからもご紹介し、共有できるようにしていきます!

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